- 作者: 吉川英治
- 出版社/メーカー: ゴマブックス株式会社
- 発売日: 2014/06/30
- メディア: Kindle版
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きっかけは某遊園地に家族で行った時。移動や行列で空き時間が多いから、長い本を携行しようと思って持って行った。その時も分量の多さにくらくらしつつ、読み、しかしそのミッションが終わると、自然と間があいてしまった。3ヶ月ほど間があいたあと、残りを読み出すとまた面白くなり、一気に最後まで読んだという次第。だから実質1ヶ月くらいで読んだことになる。
kindleの場合、表示する媒体、文字サイズでかわるので正確なページ数は言えないのだが、ロケーション番号ってやつで11万もある!。
面白かった。
いや、どう面白いかっていうのもいいにくいのだが、普通に面白いのだ。ピータージャクソンの指輪物語が面白いのと同様に面白い。
古典の平家物語を踏まえて、大きく逸脱もせず、しかし、通俗小説らしいオリジナルキャラクターと女性キャラも織り交ぜて、全く娯楽作品として申し分ない。
この小説は、昭和の25年から7年もかけて連載されたそうである。千一夜物語のシェラザードよろしく、飽きない程度に引き伸ばして語る、その按配はまさに職人芸といえよう。
また戦後すぐということで、源平の勝者敗者の生々流転や、民衆側の登場人物の厭戦気分にはとりわけ筆に力があるように思われた。これは当時の終戦直後の読者にとって、平家やのちの義経の、敗者側の描写には特別な咸興があっただろうと想像させられる。当時、フィクションにはおさまらないリアリティがあったんだろう。
宮本武蔵のお通と同様、麻鳥夫妻が、まるで実在しているかのようで、吉川マジックだよなあ。
楽しい読書だったが、老後の楽しみがまた一つ減ってしまった。