半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

Jim Tomlinson "The Lyric"

リリック

リリック

 このまえのStacey Kentがよかったので(http://d.hatena.ne.jp/hanjukudoctor/20080918)、同アルバムのプロデューサーでもあり、Staceyの旦那でもあるJim Tomlinsonのアルバムも買ってみたわけです。というか、これインストは1,2曲で、あとはStacey Kentが歌っているので、ほとんどStaceyのアルバムですけどね。

 全編、割とベタなスタンダードです。こういうアルバムは、ジャズならではのものなんですけれども(逆にいうと、ジャズのいけないところでもあるわけですが)まあいって見れば、これは自分がどういうタイプのプレイヤーかというのを表す「ベンチマークテスト」のようなもんですよね。フィギュアスケートでいうとショートプログラム。論文でいえば、Figure 1.

 しっかし、これなあ。
 正直にいいまして、Saxの演奏にはSense of Wonderがほとんど感じられません。可もなく、不可もなくというか、ボーカルもののオブリガード以上でもそれ以下でもない。
 そして、そのオブリガードにも新奇さ必死さもなく、フレーズの最大瞬間風速もなく、小憎らしいほどに平静なわけです。聴く側としては、別に悪いところはないんですけれども、逆にフックするところがほとんどなくて。

 普通のことを普通にこなすだけだったら、敢えてCDで出す必要はないんじゃないかなーとも思うわけですよ。口さがなく言えば、地方の県庁所在地の一番いいホテル、その最上階のラウンジバーでやられている演奏と何が違うの?と。

 そういうのは僕らアマチュアか、ローカルミュージシャンクラスでも、いい仕事をしている人達は沢山いるわけですから。

 しかし逆に、Jim Tomlinsonは、こういう新奇さに欠けるアルバムを出せる程度にポジションを確立していると、言うことができるのかもしれない(いかがなものかと思うが)。"Breakfast on the morning tram"はよかったもんな。
 それに、新奇さに欠けるからといって、ひどい演奏なのではない。非常にリラックスした吹き方なので、コルトレーン命!ブレッカー命!みたいなジャズ研サックス二回生、みたいな人の前にこれ見よがしにぽんと置いておいたら、演奏がかわるきっかけになるかも*1

*1:まあそういう状態のそういう人の耳には入っても心には届かないんだけどね