半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

Stacey Kent "Breakfast on the morning tram"

 カズオ・イシグロの[私を離さないで」(asin:4151200517)を読み、いたく感動したわけですけれども(その時の感想はこちら>http://d.hatena.ne.jp/hanjukudoctor/20080824)、いろいろ調べているとカズオ・イシグロ絶賛の英国歌手ということで、このステーシー・ケントさんが挙げられていたわけです。早速アマゾンで注文。こういう時のアマゾンの便利さって。

Breakfast on the Morning Tram

Breakfast on the Morning Tram

 Stacey Kentはイギリス人ジャズシンガーです。
 僕はこのアルバムで初めて聴いたんですが、白人ボーカルらしい、ストレートな唄い方をします。
 うまさを感じさせないうまさというか、しゃくりあげたりとかの装飾的な技巧もないし、黒人歌手のソウル(演歌歌手でいうコブシみたいなもんです)のようなものがなく、よけいな雑味がないきりりとしたボーカル。
 北欧のLisa Ekudalに少し印象が似ていますが、声質としてはStaceyの方がより「普通」な印象をうけます。(Lisaの声はロリコンボイスなので)。

 全12トラックでオリジナルは4曲。
 というか、これ、オリジナル曲はKazuo Ishiguroの作詞なんですね。

 残りはスタンダード…といいたいんですが、これが一筋縄ではいかない。
 ゲンズブールとか、ピエール・バルーとか、セルジオメンデスとかの、それほど有名ではない曲を取り上げています。唯一メジャーなジャズスタンダードというと、"What a Wonderful World"くらい。どれも「どっかで聴いたことあるけどなぁ…」という地味な印象を受ける佳曲で。
 だから逆に曲に手垢がついていない。その結果スタンダードとオリジナルも一見して区別しがたいわけでして、そういう意味で、全体を通して聴いた印象は、ジャズのCDを聴いているという感じがしません(いい意味で)。ただ、音はまぎれもなくジャズです。

 Soundscapeとしては、至極あっさりですね。例えば日本のボーカルでいうとNoonを想像してもらうといい。ボーカルの素材を生かした空白たっぷりのサウンドで、料理にたとえると刺身系のアレンジといえましょう。

 欲を言えば、Medium Slow/Slowが多かったので、一曲くらいFast Tempoの曲があればと思いました。ちょっとくつろぎすぎなんですよ。僕の好みとして、バックはかなりのBPMで刻んでいるんだけれども、上に乗っかっているボーカルはゆったり、みたいなのに魅かれるので(わかりやすい例でいうとCherokee。Vocal曲で言えばS'Wonderfulを超速でやる場合に、そういう感じか。あれは誰のがオリジナルだったかなぁ)そういうのがあればもう少し高評価なんですけれども。

 あと、このCDで"Never Let me Go"をやっていますがこれはジャズスタンダードのであって、小説中の曲とは違うようですね。