半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『封印されたアダルトビデオ』

オススメ度 60点
「ふーん」度 60点

封印されたアダルトビデオ

封印されたアダルトビデオ

一度は店頭に並んだけれども回収されることになった倫理的問題作アダルトビデオの列伝。
なんでおれこの本読んでんだろう。

AVは、かつて、サブカルチャー中のサブカルチャーだった。*1
勢いがある頃は、放送コードギリギリのところを攻めた快作が中にはあった。
ビデ倫」に通らなかった問題作を紹介する本。

度を越したSMプレイ(フィリピンのイースター(復活祭)で磔の儀式に出演、手のひらを釘で打ち付けられる祭りに偽装して参加。あとですっごく怒られる。)
自衛隊員を使ったAV(自衛隊員が男優として出演。当然許可はおりず…)
横浜の中華街で祭りの雑踏の中で露出AV(めっちゃ怒られる)。
年齢制限。(18歳以下はあかんのは当然のことだが、細かいルールとして、18歳以上でも高校に在籍していたらNGらしい。校則とかあるしね。法律ではなく、業界団体自主規制らしい。また20歳未満だったら親の了承がないと契約ができないそうだ。ま、こんな知識、多分今後も日の目を見ることはないが)
死んだAV女優の墓に対してSM行為。障害者出演ビデオ。
ナンパAVでタクシー内でカーセックスして、あとでタクシー会社からクレーム入り回収。運転手はクビ。
盗撮。
ペニスの皮を切り取ったやつを食わせるカニバリズムAV(こういうのはやっぱり V&Rプランニング)
アイドルマスターのパロディ『アダルトマスター』でファンからクレームが入る。
ジュニアアイドルのビデオ。監禁事件を再現した実録エロシネマ。
女犯シリーズ。これは V&Rプランニング
バッキー・ビジュアル・プランニングの、ハードレイプものAV。

ま、内容は上述した通り。
今のアダルト業界がどうなっているのかは知らないが、自分の青春時代に慣れ親しんだサブカルの一端を覗いたような本であった。
でも、なんで俺この本読んでいるんだろう。

セックス障害者たち (幻冬舎アウトロー文庫)

セックス障害者たち (幻冬舎アウトロー文庫)

これは数年前にリアル書籍で買った。
f:id:hanjukudoctor:20190905225025j:plain:w300
これ、股間の三角のところは穴があいてて下地が見えているやたら凝った装丁。奥付をみるとやっぱり祖父江慎だった。
禍々しいオーラを放つ本だった。
著者はV&Rプランニングの名物監督バクシーシ山下
V&R プランニングのAVはキワモノ、問題作が多いことで有名。
この本はバクシーシ山下が、V&Rプランニングで制作したAVを一つ一つ淡々と振り返る本。
撮影の状況とか、男優とか女優のことを語る。
結構「いやこいつら本当にどうしようもないやつで…」みたいな語りばかり。
バクシーシ山下は、被写体に対して突き放した視点と感情で撮っていたことがよくわかる本。
同じ人間に相対しているとは思えないような視点。
こわー。人間こわー。サイコパスやと思う。

で、男優たちの話なんですけど、この北崎は当時、大手商社U洋行の社員で、若くしてすでに窓際というか総務だったんです。仕事できないらしくて。
(中略)
で、この北崎をなんで使ったかというと、信用できないヤツだったからなんです。
「山下さんは、ご活躍でいらっしゃいますね。よくエロ本誌上で拝見いたしております。このたびも、私のようなものに出演の声をかけていただいて……」
ニヤニヤしながら、延々この調子なんですよ。日常会話に慇懃無礼がにじみ出てる。
基本的に、僕は自分が嫌だと思うヤツを出演させるんです。自分の感情だけが物差しなんだけれど、そういうヤツは、たいてい女の子だって嫌なわけじゃないですか。

レイプもので、女の子に本気で嫌悪感を演技させないといけないとはいえ…。
男女の性行為を撮るというよりは、お金のために人前でセックスをするというAVの不条理を露わにするためにAVを撮っている。
メタ視点なんだろうか。
なんか昆虫学者が昆虫の交尾を眺めているような、感情移入できないセックスを撮るよね。
* * *

というわけで、『封印されたアダルトビデオ』は、軽いサブカル覗き見趣味の人にはオススメ。
『セックス障害者たち』は、ある種のホラーとして読めばいい。こわー。

halfboileddoc.hatenablog.com
あ、昔にも記事書いてましたね。よっぽど衝撃だったんだ。

*1:その辺のところはNetflixの『全裸監督』とかで最近脚光を浴びているわけだ

『繁栄と衰退と』

オススメ度 100点
今となっては日本の状況ではない…度 80点

繁栄と衰退と

繁栄と衰退と

オランダの繁栄と衰退を丹念に取り上げた本。

オランダ。

新大陸の発見から、大航海時代の序盤に、スペインとポルトガルが活躍していたのは皆知ってますよね。
新大陸で金銀財宝を見つけ、大規模なプランテーションを運営し、スペインとポルトガルは世界の覇者となった。

歴史でいうと、その次は大英帝国ですよね。
イギリスの隆盛がある。
だけど、実はスペインと英国、の間に オランダが海運国家として隆盛していたという歴史があるけれども、
そのことは今歴史ではあまり顧みられることはない。

実際スペインの無敵艦隊を破ったのはエリザベス女王率いるイギリス海軍なわけだけれども、そもそもスペインの無敵艦隊は、イギリスおよび、オランダ(これはスペイン国王の保護下にあったのだが、独立戦争をしていた)と戦っており、スペインは無敵艦隊以外にも、陸軍も強く「無敵師団」とでもいわれる精強な部隊を擁し各地に派遣しては連戦連勝、という状況だった。

スペインとイギリスの海上の戦いと同時に、オランダの凄惨極める独立戦争にオランダは勝利し、その後、オランダの商船隊が勇躍。
世界を席巻し、オランダが世界の富の中心となる時代が30-40年くらいあった。

しかし、オランダの経済覇権はイギリスの嫉視の的になり、英蘭戦争が生じる。
オランダは戦争に終始消極的であるが、完膚無きまでに負けてしまう。
世界の覇権はイギリスに移る。

ではなぜオランダは経済覇権を失ってしまったのか?

歴史を振り返ってみると、ぞっとするほど経済発展していた日本との共通点があった。
この本はバブル絶頂期に「歴史に学べよ」という意味でオランダの中世〜近代史を振り返った本。

* * *

オランダの凋落として、
・経済発展を第一とし、軍備の拡張について消極的だった。
地方分権的な構造で内紛が常にあり、国と国との間での全面戦争でも、意思統一に時間がかかり一枚板になれなかった。
地政学的に見て、オランダは英国に敵対するデメリット大きい(制海権を抑えられてしまう)
・一国の衰退は他国の繁栄につながるという冷厳なる事実

などがあるようだ。

この辺りの歴史の経緯、公海の自由や経済水域、漁業権、国際収支不均衡、保護主義などの、今では抽象化された政治用語の淵源となっている。
ようするに、漁業権とか公海・領海とかの概念は、この頃にあった生々しい小競り合いの果てに生み出されたわけだ。

* * *

そういう経済強国、軍事軽視の国家オランダの失敗を踏まえて、日本はどうか。

バブルの時、「Noと言える日本」が、流行った。

沈黙の艦隊

沈黙の艦隊

歴史に学ぶという点では、過剰に経済発展を遂げていたあの頃の日本は、非常に危うい状態であったと思う。

あの頃、このままだったら、他国(はっきり言えば、アメリカ)にボコボコにされてしまうぞ、という警告がしきりに出された。
冷戦終わったあとの米国の仮想敵国は日本、という時代は確かにあった。

その頃よく引き合いに出されていたのは、ローマとカルタゴ
それからこのオランダと英国の歴史。ということになる。

現実にはどうか?
日本はアメリカとは戦わなかった。ほどよくお金を巻き上げられはしたけれど、金融・ITの中心はアメリカであり続け、日本は冷戦後の世界に対応できず、オウンゴールのように自らの価値を毀損していったので、世界の盟主アメリカの不興を買うほどではなかった。
負けるが勝ち、という言葉もある。

我々はバブル崩壊から失われた10年とか20年とか30年とかいって、長い下り坂を降りている。
間抜けで、お金も随分スってしまったし、先行きも不安だ。
多分先進国らしさや平等で民主的な国ではなくなるような薄ら寒さはあるけど、
まあ、戦争にならなかったのは、それなりによかったんじゃないかとは思う。

だから、今の僕たちは、バブルの頃の日本ではない。
英蘭戦争のオランダは、もう参考にならない。
沈黙の艦隊』を今観ても、共感はできない。

だから、むしろ前半のオランダの独立戦争の時の、宗主国スペインの容赦ない収奪の方が目を引いたね。
スペインの弾圧は、かなり過酷だったようだ。
スペインから代官として派遣された人たちは、裕福なオランダ商人を、「異教徒」ということで、捕まえまくり、異端審問で拷問しまくり殺しまくり、財産没収しまくり。

「オランダに住んでいるプロテスタントは、全員死刑!」とかそんなおふれだすんだよ。
そりゃ独立戦争するわなあ。

ある家族が審問を受けた。子供に「お父さんはお家でどんな風なの?」

よくできた息子だね。
「私は神に我々を教え導くように、そしてわれわれの罪を許すように祈りました。そして王のためにますますの繁栄と平和を祈り、市の偉い方々についても神がお護りになるように祈りました」と答えた。

はいアウトー!!
スペインはローマカソリックなわけだが、教会に礼拝し、神に祈りをささげる。
カソリックでは神父やローマカソリック教会に従うことが、敬虔な信徒として何よりも重んじられる。
プロテスタントは「教会」に忠誠を誓うのではなく、神の教義を重んじ、自宅に聖書を持ち、聖書の原典の上に立って信仰生活を送る。
ローマ・カソリック教会の説教に出席せず。
自宅で聖書を読んで礼拝していれば、それはもう異端。
したがって、自宅でお祈りをしている時点で、異端。

父と少年はただちに火刑に処せられた。
少年が「天なる父よ、われわれの犠牲を受け給え」と祈ると、僧侶は薪に火をつけながら「お前の父は神ではない。悪魔だ」と叫んだ。
火が回ってくると少年は「お父さん、天国への道が開いて、天使たちがわれわれを讃えているのが見える」と言った。
それに対して僧は「それは嘘だ。地獄が口をあけて永劫の火がお前を焼くのだ」と叫び続けたという。
そして8日後には母親も他の子供も焚殺された。

1980年代には、バブルで金満国家となった日本に警鐘を鳴らす意味で書かれたこの本だけど、まさか本のフォーカスとなりうる英蘭戦争のところではなくて、オランダ独立戦争のところでお腹いっぱいだったよ。

モンティ・パイソンにもでてきた、「スペインの宗教裁判」が、ブラックジョークとして面白いのは、そういう意味があったんだねー。

スペインの異端宗教裁判(その2)モンティ・パイソン

『アルコール依存の人はなぜ大事なときに飲んでしまうのか』

オススメ度 90点
ちょっと時事ネタ古かった度 90点

アルコール依存の人はなぜ大事なときに飲んでしまうのか

アルコール依存の人はなぜ大事なときに飲んでしまうのか

肝臓内科医・アルコール依存症の治療研修を受け、アルコール依存の人を日常的に診ている。

肝臓内科医はアルコール性肝硬変は、必ず診療しているのだが、喜んで診療している人はあまり多くはない。
なんなら、来てほしくないな、とさえ思っている人が多い。

また、患者さんの方も、病院に行きたがらない。自分が飲みすぎていることは薄々感づいているのである。
「行ったら怒られるんだろうな……」と思っている。
誰が好き好んで病院に行って怒られたいだろうか。
だから潜在患者に比べて、病院にかかっている患者数は極端に少ない。

要するに病識がなく、問題意識も少ない。病院に行きたがらない。
そういう疾患特性なのだ。

一般向けに、アルコール依存症の人の考え方や行動パターンを書いている本。
すごくわかりやすい。
いきなり冒頭で、残念ながら逝去された中川昭一さんの行動を例にとりあげ、アルコール依存症の行動や考え方を紹介している。
とてもわかりやすいが、10年前の話(刊行されたのは2011年)なので、今読むと時事性はやや薄いが。
以下、備忘録。

  • ここぞという勝負どころで、リラックスするためにアルコールを飲む、というのがアルコール依存症の特徴。普通はアルコールを飲む、という選択肢は思いつかない。アルコール依存症の人はアルコールを飲むことで緊張や不安を和らげようとする。
  • 飲酒によるブラックアウトの状態
  • 夜中に強い酒を飲む、というのも依存の人にしばしば見られる特徴
  • アルコール依存の人は睡眠薬や風邪薬などにも依存しやすい
  • イネイブラー:なんとかアルコールをやめさせたいという思いと、本人がしたことの後始末をして、結局はそのことによって本人がアルコールを飲み続けられる環境を整えてしまう人
  • アルコール依存の治療の第一歩は「自分にはアルコールの問題がある」と認めるところから始まる
  • 悪質な飲酒運転の4割はアルコール依存が原因といっても過言ではない
  • 連続飲酒発作・「否認」・スリップ・「ベティ・フォード・センター」

一般向けの話ではあるが、丁寧な解説で、読みやすい。
学術としても全く異存がなくて、一般医家向けとしてもかなり参考になることが多いと思いました。
アルコール診療普段しない先生とか、ナースとか、専門でやるつもりはなくても、ちょっと知っておきたいな、という人はさらりと読むのにはいいのではないかと思う。もちろん身内がアルコールに困っている人にとってもすごく有用。なんせ、潜在患者500万人に対して、受診している依存症患者さんは10万人程度。一般向けのこういう本はすごく重要なのである。

『夜の歌』なかにし礼

オススメ度 100点
地獄っぷり度 100点

夜の歌

夜の歌

「孤独になることよ。才能というのものは、絶対に俗世間には転がっていないものです。才能が欲しいなら、その才能にふさわしい魔物になるしかないのです」


同じ地域のジャズマン(三輪酒造の三輪さん。お酒好きな方には、神石の銘酒「神雷」の蔵元といえばわかりやすいでしょうか)がFacebookで言及していたので読んでみた。
shinrai-1716.com

ダンテ「神曲」をどことなく連想させる導入部と暗転。
ただし、移動してゆくのは地獄ではなく、筆者の幼少期や青年期の追体験
TBSのプロデューサー久世光彦氏に「影を売った男」と喝破された、なかにし礼のバックグラウンド・ストーリーを掘り下げてゆく自伝小説。

満州からの引き揚げ・避難生活の価値転倒のショック、避難民の収容所に女性を求めにくるソ連兵。集団の中から人身御供として差し出され輪姦される女性。父の自殺に近いような行動、特殊任務を帯びた室田氏と母の恋愛。引き揚げ者に特有の虚無感と社会に対する潜在的な不信感が醸成されるのも無理はない。戦争の波頭に翻弄されるというのは、こういうことか。

ただ、小説を読み進んで、平和な世の中で、成功したあとにやってくる地獄の方が凄惨だ。
なかにし礼氏が成功者となったあと、実兄にたかられるくだりの方が、人生の試練としては厳しいと思った。

戦争もひどいけど、まあみんなひどい目にあっているわけだし。
成功者として富をなし、華やかな芸能界に身をおいた生活に地獄のような底なし沼がある方が、より凄惨ではないか。

* * *

昭和の歌謡界には、今の音楽業界とは違って、まだ戦争の爪痕が残っていたし、ヤクザとか闇社会とのつながりも多分にある魑魅魍魎の世界だったんだろう。合掌、合掌……

というか、
なかにし礼って、まだ生きてるんだ!
というのが、読後の感想。

いや不謹慎で失礼。
日本芸能史の歴史上の人物なので、もうとっくに鬼籍に入っていたのだと思っていた。*1

ズシンと腹にくる小説でした。

*1:多分阿久悠と混同していたのだと思う

『心理学的経営』大沢武志

オススメ度100点
一世代前の本なのに!度 100点

心理学的経営 個をあるがままに生かす

心理学的経営 個をあるがままに生かす

ちょっと前に、心理学の、エニアグラム9、9タイプ分類の本を取り上げたりはしたけれど、
halfboileddoc.hatenablog.com

企業内のチームビルディングに、やはりこういう心理学的なアプローチはとても大事。
なぜなら、離職原因の上位には「職場での人間関係」というのが必ず入ってくるから。

この本は、この手のアプローチでは古典的とでもいえる本。なんと刊行は1993年。
現在就職活動に必須のSPIとかの生みの親らしいぞ。
リクルートの人事担当の、多分伝説的な人。

その人の「知る人ぞ知る名著」がKindleでもみられるようになった。
で、ネットのビジネス書紹介みたいなやつでも話題になっていたので、読んでみたわけだ。

* * *

うん、なにこれ。一世代前なのに、今でも通用する正しいことが書かれていてびっくりする。
1993年刊行だから、阪神大震災の少し前だよね。バブル崩壊から、世の中の実学思考への回帰を反映してか、心理学を経営に敷衍するという話はそのころはほとんど省みられることがなかったためか、理論的な背景への紹介がやや多い気はしたが、その分説得力がある。

内容はかなり広範囲に渡る。
今ならそれぞれの章が一冊の本で成立すると思う。
具体的なツールとしてはMTBIを使っているようだ。この辺りが、のちのSPIのPersonality Testに繋がっている可能性はある。

以下、備忘録。
・人間は機械のようにはいかない。
「命令系統統一の原則」は人間の場合はノイズとしての情緒や感情を基底にもつところにその本質があるわけだから、効率性と合理性をつきつめると、人間の重要な一側面を無視していないか。
・「組織風土」は無意識層として時を経ても引き継がれ、行動を支配し続ける性質のものである。
・人々を仕事に駆り立てるものは何か?(動機付け理論の紹介)
・若者を仕事に駆り立てる3条件。「自己有能性」「自己決定性」「社会的承認性」
ホーソン実験の意味するものは何か?
・集団の中でのメンバーの行動をより強く規定しているのは、経済的報酬に対する動機付けではなく、帰属する集団の中で容認された規範に従うという社会的要因
・集団力学・集団規範、自律的小集団の重要性
・日本的人事の欧米との差異は何か?(「手」を雇う欧米型と「人」を雇う日本型人事)
・企業内評価の二次元。軸は「使用価値」「存在価値」
・企業人適正の側面を「職務適応」「職場適応」「自己適応」という三つの場面との関係性において捉える考え方を提唱。

企業人事を考えるのであれば、やはり一度は目を通さないといけない本ではないかと思った。
あと、自分の組織の中で、こういう共通言語をどれだけ持ちうるか、ということも。

1993年に刊行されたとは思えない、古さを感じさせない本であるとは言っておこう。
逆に、今「心理を人事に活かせないものか…」とか思っている自分とか、全然勉強不足やん、とは思った。
自転車の再発明!

それと、こういうことを踏まえても、いわゆるブラック企業とか、昭和の大企業での働き方は、総じて改革されなかった、という事実も覚えておかなければなるまい。

小ネタ集

色々溜まっているので、適当にこっちに挙げておきます。

『アトム・ザ・ビギニング9』

手塚治虫原作、手塚眞ゆうきまさみアドバイザーでカサハラテツロー作画。
ていねいに描かれているといえばそうだが、どこに着地するのやら。
浦沢直樹Pluto』で、このパターンは一旦認知されているからねぇ…

てぃーろんたろん 一連の著作集

顔がない女の子: 座坊町一丁目

顔がない女の子: 座坊町一丁目

 WebとかTwitterとかで時折Retweetされているので知った。
 独特の語り口。画風も、下手でもなく、立体感がないわけもなく。
 女の子のパーツのはしばしから醸し出される色気(口さがなくいってしまえば、男の発情ポイント)の描写がうまい。

さよなら身体

さよなら身体

さよなら身体

この前『ホムンクルス』『殺し屋イチ』絡みでひっかかってきたやつ。
ギミックはいかにも山本英夫的ではあるけど、
若くして癌で死ぬる無念感と、送り出す家族の諦念と覚悟というのが、間接的に伝わる。

『サ道2』

サウナブームを牽引する漫画。まだまだ続きそう。
僕もサウナやってみようかなー、と思わせる作品。
あ、「ととのったァ!」はリアルでも使ってますよ。サウナ行かないけど。

進撃の巨人29』

思った以上に構築的なストーリーテリング
すごいなあこの人。伏線の回収までの尺の長さがすごい。
でも一巻がでるごとに今までのやつを全部読み直すのはけっこう厳しい…

めしばな刑事タチバナ34』

安定したマンネリズムを発揮。そろそろ誰かが結婚したりしないかと思うのだが。

『サターンリターン』鳥飼茜

浅野いにおと結婚を公表した鳥飼女史。
夫婦合わせた漫画力、1000万超人パワーだな!

壇蜜日記ゼロ』

日記少し、対談少し、グラビア少し。
いうなれば、壇蜜のスターターパックみたいなやつ。
僕は結局壇蜜日記4くらいまで読んだところで止まっているかな。

援助交際撲滅運動』

殺し屋イチまとめ買いのあと、Amazonの趣味志向に加わったので、「おまえこんなん好きちゃうの?」という感じですすめられたやつ。
うーん。
テレクラとか、すごい時代を感じさせるのと、こしばてつやの初期ということで、ややデッサンが崩れた黒ギャルというところが、なんともエロ本感あり。
映画?DVDにもなってるんだ… エロはいつの時代も強いねえ…

『フルーツ宅配便』

郊外での人妻系デリヘルの話。一言で言ってしまうと。
直接的なエロ描写は全くない。裸婦すらでてこないけど題材はエロ。
エロの周辺にある悲喜劇もろもろ、金銭トラブルとか、愛憎とか、そういうの。
人情話にもならないし、淡々といい話やいやな話が出てゆく様が、なんかすげえリアル。
読んでも全然エッチな気分にもならないし、満足感もない。なんかずしんと腹にくるやつ。

「すごいジャズには理由がある」岡田暁生,フィリップ・ストレンジ

オススメ度100点
動画もご一緒に!度 100点

すごいジャズには理由(ワケ)がある──音楽学者とジャズ・ピアニストの対話

すごいジャズには理由(ワケ)がある──音楽学者とジャズ・ピアニストの対話

クラシックの専門家岡田暁生氏がフィリップ・ストレンジのところにレッスンに通っていろいろ面白かったので対談記事を作ってみた、という本。Youtubeにもこの本の内容の動画が挙げられている。興味があればまずそちらをみてもらえばいいと思う。

第1章「アート・テイタム」前篇〜『すごいジャズには理由(ワケ)がある』

僕もまず動画を観てから本を買ったのだが、動画だけだとつらっと過ぎてしまうようなところも、本だと理解しやすい。
反対に、本だけだとわかりにくい部分も、動画で、フィリップ・ストレンジ氏の実演が付いていると理解しやすい。
Youtubeと本とメディアミックスすると最も楽しめると思う。

私はアマチュアのジャズ活動をしているのでこういうジャズのスタイルについては比較的詳しい方だと思うが、それでも、フィリップストレンジ氏が、このスタイルはこういう感じで、とか紹介しているのはすごくためになった。
また、時代を切り開くようなジャズ・ジャイアントがどういうことを考えてアドリブや、サウンドを作っているか、ということも。

30年来、ジャズ・トロンボーンというのをやっているが、一つできることが増えると、五つくらい新しくやらなきゃいけないものが見えるのがジャズだ。特に6年前からピアノを始めてジャズピアノじみたこともやるのであるが、これがまたヤバい。フロントだけだったら、簡単に済ませていたものも、コード楽器のやり口というか、演奏の味付け、起承転結、フレージング、ボイシングには無限の可能性がある。

でもこの本を見て、自分に足りない部分がまだまだあることに気付かされた。アドリブ・フレージングの時の展開やボイシングの展開など。
一生かけてもここはもうたどり着けない場所なんだなあ…と嘆息する。

 ただまあ自分の立ち位置というのも少しわかった。
 ジャズでは、スウィートな音楽がはやる時代と、Biting(どちらかというとゴツゴツとした前衛的)な音楽の流行が交互にやってくる、という話。自分は紛れもなく、スウィートで破綻のないスムースな音楽が好きで、それに共感できるということだ。トロンボーンという楽器の特性もあるけれども、アバンギャルドな音楽よりも、よくできた精密機械のような音楽が好きなんだ。それは上下や貴賎があるわけではなく、ただそうである、ということになる。

まあしかし、動画と本と合わせて楽しめる。ジャズの知識がない方でも特に動画は特にわかりやすい。
入門編から中級編の間くらいに一度見ておけば、すげー理解しやすいと思う。