半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

小ネタ集

読んでいるストック。
Kindleダウンロード済のものを一挙放出(これをしておかないとiPadから消せない…)

死役所 12

死役所 12巻 (バンチコミックス)

死役所 12巻 (バンチコミックス)

着想のおもしろい漫画で、新刊出るたびに読んでいるが、今ひとつストーリーがすすまない。
オススメ度 30点

正直不動産 1

めっちゃ敏腕な不動産営業の人が、超自然の力で嘘がつけなくなってしまった。
途端に、いままで不動産営業でつかっていた「嘘トーク」が使えなくなって窮地に陥る。
……っておい!という設定で、不動産営業の人は怒るか自嘲の笑いをうかべるに違いない。
まあこの設定が秀逸なので、それに従って話は進む。
嘘がつけなくなった営業マンは、こうなったら今までの知識を動員して、嘘をつかない不動産営業を目指す、という
業界の慣行に物申す、系の漫画。医療系で言えば「ブラックジャックによろしく」みたいなものか。
オススメ度 60点

ニート飯1

ニートグルメ漫画。うーん。
金ない人がなんか時間をゆったりつかって、衣食住を過ごしていて、OLの姉妹がムカつく、という構図。
まあ、そうでしょうね。オススメ度 40点
ここからストーリーが伸びていくんだろうか…

異世界おじさん

異世界おじさん 1 (MFC)

異世界おじさん 1 (MFC)

多分、チートもの、ということになるのだろうと思う。
異世界から帰ってきたニートのおじさん。なんか何十年もファンタジー世界にいたおかげで、
レベルも高いけど、世間知がない、というアンバランスな状況でいろんかことが起こる。
あと、ツンデレ異世界住人も撹乱する。

ちはやふる40

ついに名人戦、の挑戦者が昇に決定。熱いぜ! オススメ度 80点

からかい上手の元高木さん4

からかい上手の高木さん10

この、結婚した「元高木さん」と、中学生の甘酸っぱいエピソードの「高木さん」を同時に読むってどうなん。
と思うけど、この手の女性に翻弄されるっつーのは男性の夢ですな。
この高木さんには、メンヘラっぽい感じが全然なくて健全な感じがするのであるが、ひっかかる男西片みたいなやつは、
たいていメンがヘラってる女子につかまる。
よかったね西片。
ただ「猫のお寺の知恩さん」もそうだけど、女性に萌える瞬間を切り取っているこういう作品、ちょっとあざとすぎへん?と思う。
女性はメンヘラ、男性は痴漢を量産せえへん? オススメ度60点

モンキーピーク9

モンキーピーク 9

モンキーピーク 9

これも刺激強すぎ系漫画。だんだん真相に近づいてきた?
敵方の猿の味方、ついにでてくる。 オススメ度 40点

楽園市場

楽園市場 1 (エッジスタコミックス)

楽園市場 1 (エッジスタコミックス)

笑うせぇるすまんとドラえもんを足して3で割ったような感じ。絵柄は山口譲二に少しにている。
オススメ度 30点

『人生やらなくていいリスト』

オススメ度 70点
だけど、一旦はこの人のように鬼仕事はした方がいいと思うぞ度 70点

人生やらなくていいリスト (講談社+α文庫)

人生やらなくていいリスト (講談社+α文庫)

Kindle日替わりセールで買ったんだと思う。

僕はよく知らないけど四角大輔さんは、もともとソニーミュージックに入社し、地方(北海道)配属から中央に抜擢され、多くのアーティストを育てミリオンヒット(絢香・Superfly、平井堅など)のプロデューサーになった伝説的な人物。
今はそこをやめて、ニュージーランドバスフィッシングなど自然の中でくらし、日本に戻ってはフリーランスコンサルティングとか、オンラインサロンとかプロデューサー業をしている、という、わかりやすくめっちゃかっこいい経歴の方。

ホリエモンとか箕輪氏とか西野氏とかと同様、インフルエンサーの一人、ということになるだろう。

本は、わかりやすい言葉で、自分の半生を振り返り、しんどかったことや、達成できたことなどを淡々と書いている。
スピリチュアル的なイラストも随所にさしはさまれ、基本的にはとても読みやすい。
万人が読める形で書かれてあり、勇気づけられもする。

ただ、題名として「やらなくていいリスト」という書き方ではあったけれども、あまりそういう印象は抱かなかった。
読んで感じたことは「やらなければいけないこと」*1リスト、だ。
人とのつながりを大事にする。
礼儀・気持ちを大事にする。
丁寧に仕事に向きあう、とかそういうこと。
自分の感性に響いたものは、何がなんでもくらいついていく。

逆に、世間的なしがらみとか、多くの人間が囚われている社会の慣行・一般常識には確かに「やらなくていい」というサジェスチョンがなされているように感じた。

いい事書いてあるんだよね。
でも、この文体で想定される読者に、果たして言っていいのかな?

* * *

万人向けの平易な語り口だが、この人だって、仕事を初めて数年間は、不適応かも…と自問自答しつつ、必死に食らいついて食らいついて結果を出してきた方。もちろん、もともとかなりハイスペックな方で、一流企業にて日本を代表するような仕事をしておられることを忘れちゃいけない。

多分、同じような出自と能力で、日本の大企業であくせくと仕事をし、中間管理職で残業すれども手当はつかず、部下をどなりつけ上からは成果を期待され、仕事のための仕事、みたいなことをやっている社畜の方々にこそ、読まれるべき本ではないかと思う。

でも、何ももっていない若い世代には、過剰に影響されすぎないか?
野狐禅というか、ミスリードしてしまいはしないか、という危険は感じた。

この文体は学生、もしくはふわっとした状況におられる方々(イケハヤ脱社畜サロンとかのターゲット層)の方々にこそ届きやすい。
けど、何も武器ももっていない状態で、ノマドワーカーになるのは結構難しいことだし*2が、そういう人が、変にロールモデルにしそうな危険性を感じた。

文体と想定するターゲットの乖離。
『りぼん』に『ドカベン』が連載されているような。

でも、仕事を極め、成果を出してきた男が、こういうシンプルでストレートな哲学を身上としている、ということは我々も自らの幸福のためには再考した方がいいのかもしれない。

*1:これが日本的”ZEN”なのであろうか?

*2:それでも、不可能ではないのが現代のすばらしいところだが、その確率は決して高くはないことは記銘しておかなければならない

中島らも『人体模型の夜』

オススメ度 50点
印税はだれのところに行くんだろう度 50点

人体模型の夜 (集英社文庫)

人体模型の夜 (集英社文庫)

これは、Kindle日替わりセールにて。
中島らもさんは、高校の先輩、ということになる。
作家生活、関西での戯曲家生活、アルコール依存の生活も含めて、破天荒さと、韜晦した芸風。
才能のある人だし、手がけた分野は多岐にわたるわけですけど、100年先まで残るような業績があるかといわれると、ちょっと……
そういうところは平賀源内的であるとは思う。

アルコール依存症の本(『今夜、すべてのバーで』)と、『ガダラの豚』はさすがに名作だとは思うが、日々糊口をしのぐための作品については、同時代性を失ってしまった今、奇妙に色あせて見える。

これは自戒を込めて、ということになるが、マルチタレントって、その人が生きている時代が終わると、急速に色あせてしまうよな。
一つのことに打ち込んで一つの作品を残した作品の方が、時代の評価には耐えうるみたいだ。

* * *

さて、そんだけ前振りをしておいてなんだが、この『人体模型の夜』は、小川洋子澁澤龍彦的な、『奇譚』とでもいうような短編集。
連作短編というほどでもなく、また、奇譚とはいえ、別に種をあかせばなんでもないような話もある。
一つ一つの話はまあおもしろいのだが、今ひとつまとまりにかけ、完成度が浅い。

中島らもの才能は疑うものではないので、単純に、時間的な制約が限られて、出荷したものと思う。
彼に改稿する時間があれば、とは思うので、返す返すも残念だ。

ガダラの豚 I (集英社文庫)

ガダラの豚 I (集英社文庫)

halfboileddoc.hatenablog.com
このころの僕は、肝臓内科という自覚もなかったし、アルコール性肝炎を積極的に診療してもいなかった。懐かしいなあ。

『台湾とは何か』野嶋剛

オススメ度 80点
入門書として最適度 100点

台湾とは何か (ちくま新書)

台湾とは何か (ちくま新書)

歴史的経緯も、現在の政治力学からいっても、複雑極まりない台湾についての入門知識の概説。
朝日新聞の記者ということだが、偏向性はあまり感じられず、多様なスタンスをできるだけ平等に書くようにしているように感じられた。


台湾、中国。
民族自決の観点から、一国二制度といわれる中国国民党共産党との確執。
世代による受け止め方の違い。

民進党から国民党、そして民進党となっている現在の二大政党制となっている台湾の政治の現状と指導者のプロファイルなど、 台湾の過去・現在・未来を総花的に取り上げていて、バランスがいい。

台湾と中国の関係、台湾と日本の関係って、やはりかなり、複雑で曖昧さを含んだものであるなあということを再確認した。

例えば紅の豚で、ジーナさんのセリフに、

「ここではあなたのお国より、人生がもうちょっと複雑なの」

とある。
日台中は、国と国との関係としてはいささか複雑すぎる。

普通の二国間関係だったら、ラブラブ!、結婚!離婚!みたいなシンプルに考えられるが、
日中台湾の関係性なんて、別れた妻と愛人の関係などに近い。
その中で起こった数々の出来事など、簡単に正邪を判定できないようなものである。

あるいは。
普通の二国間関係が、CとかC7とかだとしたら中国⇔台湾⇔日本の関係は、
C69とかC+11⊿7 とかそういう複雑なコードネームみたいなものかと思った。

そういう複雑の妙を、味わえるかどうかで、台湾の置かれた立場を理解できるかの分かれ目だと思う。
そういう立場に置かれた台湾国民(国民という言い方は、これまた微妙なものではあるが)は不幸か?
いや、日本だって、その成功と発展、敗戦と復興の歴史だって、シンプルなものではない。

『明治〆(シメ)のヨーグルト』明治

オススメ度 60点
よく考えたら当直は「〆」とかないんじゃないか度 70点

あるいは、商品元のページ。
catalog-p.meiji.co.jp

21世紀入ってからずーっとダイエットしている私ですが*1、当直中には、ストレスや、テンションを保つために、夜食・おやつなどを買い込みます。
エナジードリンクなども。(この辺は以前にも書きました)
hanjukudoctor.hatenablog.com

当直をすれば、その日も当直明けも、フィットネス・ジムワークにはいけないし*2、どちらかというと、当直って身体的なダメージが大きい。
身を削って当直をするわけです。
ま、物理的には全然削れておらず、太るわけですけれども。

* * *

当直前には近くのコンビニで夜食を物色する。
この明治〆(シメ)のヨーグルトをみかけた。

低カロリーでさわやかなあじわいに仕立てた大容量のヨーグルト。
夜の小腹満たしに手軽に食べられます。
44%カロリーオフ!

お、ええやん。と思って買った。

食べる。
これ、ブルガリアヨーグルトそのままや……

* * *

我が家では、ヨーグルトはブルガリアヨーグルト一押し。
やや水分含有量が低めのテクスチャーがお好み。
ビヒダス・ナチュレとかのクリーミーなやつは、発酵菌も違うから味も違う。私も妻も好みに召さないのである。
そんなわけで家ではブレがなく、無糖のブルガリアヨーグルトを大量に購入している。
なので効きブルガリアヨーグルトは得意だ。
〆ヨーグルトの基本線は紛れもなくブルガリアヨーグルトだと思う。

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自宅冷蔵庫。4人家族で、常時ストックは8個前後。


味や食感は180gパックの「低糖」のやつに似ている。

比較してみよう。

商品名 カロリー タンパク質 脂質 炭水化物
〆のヨーグルト 180g 89kcal (49kcal/100g) 6.1g 3.0g 17.9g
ブルガリアヨーグルト低糖 180g 144kcal (80kcal/100g) 6.2g 5.5g 17.5g

44%カロリーオフは、十勝まろやかヨーグルトと比べて、ということらしい。
十勝ヨーグルトは 71kcal/78gなので 91kcal/100gこれにくらべると、確かにそんなもんだ。

これってスモールカップの、どちらかというとデザート感のあるやつだからね。
商品ラインナップの中でもっともカロリーの高いものとくらべて44% Offということなんだろう。
それって「僕誠実ですよーマイケル富岡*3よりはー」とか言うてるようなもんや。

低脂肪のブルガリアヨーグルトファミリーパック(無糖)は 38kcal/100gくらい(脂質は0g)だ。


結論からいうと、ブルガリアヨーグルトの普通のと低脂肪をブレンドし、糖質は通常のブドウ糖果糖に加えてエリスリトール・スクラロース・ポリデキストロースなどの合成甘味料でカロリーを調整したものが、この明治〆ヨーグルト、ということになるのだろう。


ただ、商品名と、商品パッケージにかかれた煽り文句で、買う気にさせられてしまう。
我々は食品そのものを食べているというよりは、言葉を、情報を食べているのだと思う。

人はパンのみにて生きるにあらず。

*1:成果はあがったりあがらなかったり。訊かないでいただきたい

*2:当直明けのジムワークは、多分血管イベントが優位に高くなりそうだと思う。死ぬかも…って思うもの。

*3:12股らしいね

Kenny Drew ”Undercurrent”

オススメ度 60点

Undercurrent

Undercurrent

少し前、吉村昭の初期作品、晩年とけっこう違うな−ということを書いた際に、Kenny Drewみたいだねーとか書いた。
halfboileddoc.hatenablog.com

例に挙げはしたものの、もっていなかったCDなので、買った。
イマドキはStreamingで聴けばいいのだけれど、アナクロな人間なので*1きちんと聴くときは、やはりCDを買うことにしている。
メンバーは:
Freddie Hubbard (tp)
Hank Mobley (tp)
Kenny Drew (p)
Sam Jones (b)
Louis Hayes (ds)

まぎれもないハードバップの佳作だと思う。
肩の力が入りすぎているといえば入りすぎている、ちょっと凝りすぎたヘッドアレンジ。
ハバードも、ハンク・モブレーもかなりイケイケ。

ただ、かなりの力作ではあるけれども、全曲オリジナルで、ジャンルそのものの興奮も遠くなった現代から振り返ると、「聴きどころ」が難しいかもね。
膨大なアーカイブの中では、スタンダードナンバーの一つも入っていないと、かえりみられない。
(例えば、Criss Crossレーベルとかは、そういう時代を考慮して、一曲はスタンダードが入っていたりする)

こういう作品が安穏としていたジャンルごと廃棄されたのが70年代であり、80年代だからね。
なんか晩年、Kenny Drewが、ヨーロッパで、ベタベタでアマアマのスタンダード曲集を録音して日銭を稼いでいたのも、無理ないなあという気がする。
そういう意味では、このアルバムは青春の蹉跌みたいなもんだ。

ちなみにUndercurrentという題名では、こちらを連想する方が多いとは思う。

Undercurrent [12 inch Analog]

Undercurrent [12 inch Analog]

Bill EvansJim HallのDuo。二人の丁々発止としたやり取り、むしろBill Evansのソリッドさが際立つこちらのほうが、世間的には知名度が高い。
こちらはStandard中心に選曲されているが、これも一曲として緩むことがない。

*1:アナクロ、こそ言わないな

『もっと言ってはいけない』橘玲

おススメ度 100点
炎上しないのは本人が表に出ないからか度 80点

もっと言ってはいけない (新潮新書)

もっと言ってはいけない (新潮新書)

前作の「言ってはいけない」も衝撃的な作品ではあったが、さらにポリティカリーインコレクトな事象を扱っている。

冒頭、しょっぱなからカマしが入る。
PIAACの調査(成人の社会生活に求められる能力の総合値。まあ大人のIQみたいなもん)で、日本が参加国中1位であったが、実はその1位の日本にしても、30%簡単な問題文を理解できていない、ということが判明した。さらに、パソコンを使った基本的な仕事ができる日本人は1割以下である、と。
言語理解出来ない人が3割位居ますよ、という衝撃の結果からこの本は始まる。

以下、覚書

  • 一般知能の遺伝率は従来考えられているよりもずっと高い。
  • 男女の知能の差、白人と黒人の知能の差
  • 知能に及ぼす遺伝の影響は発達とともに増加する
  • 同性愛に関連した遺伝子の可能性
  • リベラルな社会であるほど、遺伝率が上がる
  • 生活保護による社会保障は母親の自尊心を下げるため教育効果が低い。漫然とお金を配るだけでは思ったような政策効果はえられそうにない。
  • 人類の共通祖先、ネアンデルタール人との交雑、出アフリカ(アフリカ以外のすべての人種の多様性よりもアフリカの内部での人種多様性の方が大きい)
  • 遺伝と進化は、現在も加速しつつある。プロテスタンティズム科挙制度が集団IQを押し上げた可能性。
  • アシュケナージや華僑などの特定小集団のIQが有意に高い理由
  • 人の自己家畜化、内向的/外交的の性質の違い、睾丸の大きさによる考察
  • 日本人は内向的=刺激に敏感、セロトニン運搬遺伝子 SS型が日本には多い(脳内のセロトニン発現量が少ない)

通読していただいて、仮説の妙味を楽しんでもらえればいいだろう。
個人的にはグールドのまあまあ熱心な読者だったので、一連の著作の紹介がされていたので懐かしかった。

あくまでクールに、感情を排して、しかし受け取り方によっては非常に他者を傷つけかねないデリケートな事象を取り扱っている。
多分売れれば、それなりにバッシングされたりしうるだろうなと思わせる一方で、クールな文体は脊髄反射的に書かれた内容で怒り出すバカな人間をフィルタリングする機能があるのだろうなとも思った。