オススメ度 70点
だけど、一旦はこの人のように鬼仕事はした方がいいと思うぞ度 70点
- 作者: 四角大輔
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2018/04/20
- メディア: 文庫
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僕はよく知らないけど四角大輔さんは、もともとソニーミュージックに入社し、地方(北海道)配属から中央に抜擢され、多くのアーティストを育てミリオンヒット(絢香・Superfly、平井堅など)のプロデューサーになった伝説的な人物。
今はそこをやめて、ニュージーランドでバスフィッシングなど自然の中でくらし、日本に戻ってはフリーランスでコンサルティングとか、オンラインサロンとかプロデューサー業をしている、という、わかりやすくめっちゃかっこいい経歴の方。
ホリエモンとか箕輪氏とか西野氏とかと同様、インフルエンサーの一人、ということになるだろう。
本は、わかりやすい言葉で、自分の半生を振り返り、しんどかったことや、達成できたことなどを淡々と書いている。
スピリチュアル的なイラストも随所にさしはさまれ、基本的にはとても読みやすい。
万人が読める形で書かれてあり、勇気づけられもする。
ただ、題名として「やらなくていいリスト」という書き方ではあったけれども、あまりそういう印象は抱かなかった。
読んで感じたことは「やらなければいけないこと」*1リスト、だ。
人とのつながりを大事にする。
礼儀・気持ちを大事にする。
丁寧に仕事に向きあう、とかそういうこと。
自分の感性に響いたものは、何がなんでもくらいついていく。
逆に、世間的なしがらみとか、多くの人間が囚われている社会の慣行・一般常識には確かに「やらなくていい」というサジェスチョンがなされているように感じた。
いい事書いてあるんだよね。
でも、この文体で想定される読者に、果たして言っていいのかな?
* * *
万人向けの平易な語り口だが、この人だって、仕事を初めて数年間は、不適応かも…と自問自答しつつ、必死に食らいついて食らいついて結果を出してきた方。もちろん、もともとかなりハイスペックな方で、一流企業にて日本を代表するような仕事をしておられることを忘れちゃいけない。
多分、同じような出自と能力で、日本の大企業であくせくと仕事をし、中間管理職で残業すれども手当はつかず、部下をどなりつけ上からは成果を期待され、仕事のための仕事、みたいなことをやっている社畜の方々にこそ、読まれるべき本ではないかと思う。
でも、何ももっていない若い世代には、過剰に影響されすぎないか?
野狐禅というか、ミスリードしてしまいはしないか、という危険は感じた。
この文体は学生、もしくはふわっとした状況におられる方々(イケハヤ脱社畜サロンとかのターゲット層)の方々にこそ届きやすい。
けど、何も武器ももっていない状態で、ノマドワーカーになるのは結構難しいことだし*2が、そういう人が、変にロールモデルにしそうな危険性を感じた。
文体と想定するターゲットの乖離。
『りぼん』に『ドカベン』が連載されているような。
でも、仕事を極め、成果を出してきた男が、こういうシンプルでストレートな哲学を身上としている、ということは我々も自らの幸福のためには再考した方がいいのかもしれない。