半熟三昧(本とか音楽とか)

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『一発屋芸人列伝』山田ルイ53世

一発屋芸人列伝

一発屋芸人列伝

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一発屋芸人列伝

一発屋芸人列伝

なにか雑誌で取り上げられていたので読んでみた。
山田ルイ53世は、もと神童。進学校にて引きこもりになっていたという自伝で、文筆の才を明らかにした。
これは、自分達と同じく「一発屋」とでもいうべきギャクがあたり、売れた芸人達へのインタビュー本。

一瞬にして売れそして、継続したブレイクを維持できず、いつしか忘れさられてしまった、いわゆる「一発屋」。
普通に考えてると、一発屋の話はおもしろいはず。それは、

  • 売れないときの貧乏話
  • ブレイクしたときの仰天エピソード
  • そして徐々に人気が陰りがでてきた時の周囲の変化

と、振れ幅が大きいからだろうね。

ただ、好素材だからといって、一発屋への取材は多分難しそう。栄枯盛衰、人の心変わりをみさせられた彼らは、取材にも心を開くとは思えない。髭男爵山田ルイ53世の有利なことは、自分も一発屋であることから、取材対象も心を開きやすかったはずだ。一発屋の集まり「一発会」という親睦会もあるらしい。

一発屋と呼ばれる人たちは「キャラ芸人」が多い。その理由は、社交が苦手で、孤立する人が結構いるから。社交的な人は、沈まない。つまり、一発屋と言われる人たちは本質的に決まっている、ということになる。だからこそ「一発屋」には独特の悲哀が漂うのだろう。

様々な話題が俎上に載せられた一発屋達の集いで、最も盛り上がりを見せたのがまさにそれ。
「一体、自分は○発屋なのか」という検証トークである。
たとえば、ダンディ坂野。2003年に「ゲッツ!」で一世を風靡した彼を丁度一発とすると、我々髭男爵はせいぜい0.8発だ……といった具合。

ただ、人生の幸福は○発であることではなく、その後の仕事のない谷間の時期が、どれくらい食える状態であったか、によるだろう。あわよくば、有吉のように一発屋から脱する人もいる。

怪我して働けなくなったあと、奥様が実業家として成功しているHG、有名な芸能プロデューサーの息子という出自のわりに、残念きわまりないコウメ太夫、異色の哲学と昭和テイストのテツトモ、ジョイマンの生き方、ロケバス芸人戦争のムーディー勝山と天津木村、波田陽区とにかく明るい安村の家族のいい話、キンタロー。

それぞれ丁寧に掘り下げられ「取材されがい」のあるいい記事が多かったように思う。

読み味としては水道橋博士の一連の著作に近い。
文体とか、改行のスタイルとか。
これはブログ時代の文章の書き方は、どうしてもある程度似通ってしまうということもあると思うが、対象への愛の書き方が、水道橋と似ているのかもしれない。