- アーティスト: 宇多田ヒカル
- 出版社/メーカー: Sony Music Labels Inc.
- 発売日: 2018/06/27
- メディア: MP3 ダウンロード
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なぜか眉毛の手入れを全くしていない近影。
深い印象を残すジャケット写真。
Songsの「宇多田ヒカル特集」を観て購入した。
おわ、これ、すごい。
すごいよ、これ。
なんか凄いところに行っちゃったなあ宇多田ヒカル。
一聴した感想。
その後カーステに食わせて数ヶ月聴きこみましたが、聴くたびに感心します。
失礼なコメントではあるが、宇多田ヒカルに対し、歌がものすごいうまいという感想を感じたことはない。
しかしそれは自分の楽曲を伝えるには必要十分な技量の歌唱力を提示しているからなんだろうと思う。
本人には「歌がうまいあたし」という価値観とこだわりはなさそうで、彼女にとっては伝えたい音楽のイデアが優先されるべきものであり、歌唱そのものはあくまで伝達媒体に過ぎないと感じているフシはある。
つまりはボーカリストではなく、ミュージシャンなのだ。
もし彼女が他人の楽曲のカバーアルバムを出すのなら、メロディーの美しさを残しつつリズムやコード進行などを大胆に再解釈したもの、つまり彼女らしさを全面に押し出したものになるのではと期待する。
逆説的な話だが、アレンジャーやコンポーザーとして考えると、歌は抜群にうまいと思う*1。
今回のアルバムは、どちらかというと肉声を活かしたシンプルなサウンドフィギュアなんだけど、リズムテンションがすごい。
Webでも「誓い」が話題になっていたようだ。
matome.naver.jp
たとえばNaverのまとめサイトでは、単純に、スペクトル分析ソフトにかけて解釈していますが、僕はこれはちょっと違うと思う。
僕はジャズ畑の人間なので、聴き味はジャズワルツによくある3拍4連のフィールに近いと思いました。
4拍で割った世界と3拍のポリリズムにメロディーが行ったり来たり。ポリリズミックアプローチですよね。
かなりおもしろいことをさらりとやっている。
caughtacold.hatenablog.com
この方の解釈はわかりやすくてためになります。僕が考えていたよりももうちょっと複雑でした。ううむ。
Too Proudでも同様のポリリズム*2がでてきます。
以前にTwitterで本人もつぶやいていましたが、こういうリズムテンションは少し彼女の中で流行っているのかなと思いました。
コードワークについても、アニソンなどによくある複雑極まりないコード(すごいなと思いますけどね)ではなく、基本的にすごくシンプルなんだけど、ほんの少し破調とでもいうべき「あれっ?」というどきっとするフックが随所にでてくる。ポピュラリティを保ちつつ、鋭さを失わない。
歌詞については、ダイアローグ感はますますなくなりモノローグゆえの言語の煮詰まり感は少し気になるけれども*3
で、こんだけの芳醇さを、あまり気にせず一聴したら「あれ?普通?」と思わされてしまう韜晦ぶり。
前作Fantomeの、ものすごくあけすけな歌詞群もすごいなあと思ったけど、今作、いろいろ含めて、それを遥かに上回るクオリティだと思いました。
なんというか、リズムにしろ、コードワークにしろ、歌詞にしろ、いろいろ自由極まりない。
それでいて、間口の広い音楽。
前作では、二時間だけのバカンス、良かったですね。イタリアっぽい「大人の世界」の歌詞だと思う。
宇多田ヒカル - 二時間だけのバカンス featuring 椎名林檎