- アーティスト: Jiggs Whigham
- 出版社/メーカー: Mons Records
- 発売日: 1997/02/18
- メディア: CD
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Jiggs Whigham、僕もカール・フォンタナとやっているのを一枚持っているきりです。一応ジャズ・トロンボニストのはしくれで、濃ゆい偏差値53くらいの中等度マニアの自分でさえも知ってるか知らないかぎりぎりですから、確かに田舎の中古CD店なら500円の値で投げ売りされるのもむべなるかな、と思う。
しかし、こうして購入してもJiggsさんには一円も印税が入らないわけで、それはちょっと申し訳ない。中古レコード店って、こういうネット・コンテンツ・ビジネスの対極にあるような商売だけど、今後どうなっていくんだろうか。
それはさておき、内容です。
基本的には「なめらか上手」系の演奏で、フレーズも泥臭くないし、速い曲でもしっかりしてますし。リズムセクションも、割と新しい感じのサウンドです。ローズのピアノとか使って。しかし、一枚を通してどんな印象か…といわれると、割とつるっとしてるんですよねー。
あんまりケチをつけたくなるようなところが無い代わりに、息止まるような瞬間というのもないです。情熱がない…とはいいませんが、狂気一歩手前のジャズが発するある種の熱量には欠けている。
でもね、悪くないんですよ。なんともとらえどころのない一枚です。
あ、最後の曲は"Going Home"(♪遠ーきー、やーまにー、日ーが落ーちてーってやつ)、有名な曲をソロなしでテーマのみさらっと吹いてますが、これはとてもいい。
ジャケもすごくいい。
おそらく客船の甲板の写真でしょうか。そんな大きな船じゃなくて、フェリーくらいの大きさの。
並んでいる木のデッキチェアは、確か"Jazz on a Summer day"(真夏の夜のジャズ)の、観客席の椅子もこんなじゃなかったかと思います。古き佳きアメリカ。
あの映画は演奏シーンの合間に、夏のさなかの、風が凪いだ瞬間のような静かなショットが挿入されていて、とても詩情がありました。このジャケもそういう中の一枚のようです。この風景と最後の曲の"Going Home"は、確かに同じトーンで、地続きであるように思う。ジャケの右の文字とかも、そういう昔感があって、とてもいい。
終わりよければすべて良し、といいますが、そういうわけで、CDが終わり、プレーヤーがカタリと停止した時に、なんかぐっと胸に迫るアルバムなんですね。これはシリコンオーディオに落とさずCDで聴くべきだと思う。