- 作者: 重松清
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/02/15
- メディア: 文庫
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最近は、他の人が買ってきた本を読んだりもするので自分の守備範囲外の本も読めてご機嫌だ。で、この本。
いい話だと思った。
(そんなにネタバレはしませんが、一応隠します)
正直に言えば、「あのときああしていればよかった……」とか、「親子間の断絶・ディスコミュニケーション」とか「浮気」とか、「自分が父になって、同い年であった頃の父のこと」とか「跡継ぎ」とか「癌」とか、小説の構成要素一つ一つは、言っちゃあなんですが、平凡なのに、その見せ方、組み合わせが非常に巧妙だと思った。一本の小説として、恐ろしい程構成がきまっていて、無駄なところが殆ど無いように思わせられる。
逆に、映画の原作本のようにさえ見えてしまうくらい、あまりに話がうますぎるので、映像化した絵面が透けてみえてしまうし、筋書きもそうなるだろうなというところが見えすぎてしまうのが、残念な点でしょうか。
しかし、物語の筋は八割方ファンタジーなのですが、完全にあっちの世界に行ってしまうのではなく、ファンタジーはファンタジーの中で完結し、現実世界の因果律は侵さないのはよいですね。結果的には脳内完結していたとしても辻褄は合うようにしているので、ファンタジーとして描きながら現実に目を向けさせる。ぐっときます。
勿論、古くはディケンズの「クリスマス・キャロル」だって、同じような枠組みではあるし、「あのときああしていれば……」というのを思わない人はいないでしょうけど。