半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

中島らも『人体模型の夜』

オススメ度 50点
印税はだれのところに行くんだろう度 50点

人体模型の夜 (集英社文庫)

人体模型の夜 (集英社文庫)

これは、Kindle日替わりセールにて。
中島らもさんは、高校の先輩、ということになる。
作家生活、関西での戯曲家生活、アルコール依存の生活も含めて、破天荒さと、韜晦した芸風。
才能のある人だし、手がけた分野は多岐にわたるわけですけど、100年先まで残るような業績があるかといわれると、ちょっと……
そういうところは平賀源内的であるとは思う。

アルコール依存症の本(『今夜、すべてのバーで』)と、『ガダラの豚』はさすがに名作だとは思うが、日々糊口をしのぐための作品については、同時代性を失ってしまった今、奇妙に色あせて見える。

これは自戒を込めて、ということになるが、マルチタレントって、その人が生きている時代が終わると、急速に色あせてしまうよな。
一つのことに打ち込んで一つの作品を残した作品の方が、時代の評価には耐えうるみたいだ。

* * *

さて、そんだけ前振りをしておいてなんだが、この『人体模型の夜』は、小川洋子澁澤龍彦的な、『奇譚』とでもいうような短編集。
連作短編というほどでもなく、また、奇譚とはいえ、別に種をあかせばなんでもないような話もある。
一つ一つの話はまあおもしろいのだが、今ひとつまとまりにかけ、完成度が浅い。

中島らもの才能は疑うものではないので、単純に、時間的な制約が限られて、出荷したものと思う。
彼に改稿する時間があれば、とは思うので、返す返すも残念だ。

ガダラの豚 I (集英社文庫)

ガダラの豚 I (集英社文庫)

halfboileddoc.hatenablog.com
このころの僕は、肝臓内科という自覚もなかったし、アルコール性肝炎を積極的に診療してもいなかった。懐かしいなあ。