半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『正義を振りかざす「極端な人」の正体』

オススメ度 80点
うんざり度 100点

SNSで目にする「炎上」。Twitterに多い。
140字で簡潔に、というのは、逆に言うといい足りないし、言い足りないとも思わない言葉足らずな人が存在する。
おまけに匿名だし。

炎上には一定の理由があるが、その炎上の結果が、職を失ったり、店がつぶれたり、自殺に追い込まれるなど社会から退場するまで攻撃されるほどのことだろうか?

というのが、本書の出発点。
全くそのとおりですな。

以下、要点。

  • 「不謹慎」なものに対しては全力で非難する風潮で、社会の非寛容化すると、やがて社会の分断が引き起こされる。(極端な人同士では議論や合意が得られにくいから)
  • ネットとは、「能動的な発信」だけで構成された、極めて特殊な言論空間である。
  • クレーマーは「正義」だと思っているからこそ極端な物言い・批判・人格否定をする。
  • 極端な人は、複数のアカウントを使って執拗に攻撃をする反面、中庸な意見の人はそれほど強い想いがないため、発信も少ない。結果、見える意見だけを抽出すると、極端な意見だけになってしまう(谷型の分布)
  • 多くの炎上事例はメディア(TV・雑誌)などで取り上げられることで、最も広く拡散される。
  • 冤罪でスマイリーキクチを糾弾していたものたちは、誰一人反省さえしなかった(当事者意識も希薄)。
  • 若者よりも高齢者の方が極端な意見を持っていた(人は歳を取るごとに多様な視点をもち、より寛容になるのではなく、むしろどんどん考えが凝り固まって極端になってゆく)
  • ネットに限らず「極端な人」はいる(いわゆるクレーマー)
  • 極端な人は、高学歴・高所得で社会階層が高い・自尊感情が高く、完全主義的な傾向がある、社会的不満が強い、という特徴がある。(ネトウヨは低学歴の引きこもりではない)


本の最後には、「極端な人にならないために」という章があった。
けど、多分極端な人はこういう本読まないと思う。
遅刻せず来ている人に「遅刻はいかんぞ」と怒ってるのに近い。

社会としてこの「極端な人」の行動を制限できるような仕組みは作れないのだろうか。
まあ今の法律は被害者に不利すぎるらしいので、もう法改正という形でバランスはとられるのでしょうが、
それには数年かかる。

あーやだねえ。やだやだ。
もともとそれなりに高学歴だけど、そんなに社会的には安定しておらず、社会不満のある方で、過度に攻撃的な方。
僕の周りでも、うーん、あの人とあの人と
……4−5人くらいはいるね。
かくいう自分も、冷や飯食わされた、というルサンチマンがあったらそうなる自覚はある。

明治時代だったら「不平士族」が、まんまそうだよね。
まあ人斬りとかするよりはましなのか…いや人死にもでてるしなあ。

人の世はどこまでいっても修羅。
弱肉強食のジャングル、無法地帯ですよね…

興味深い本であったが、「ではどうすれば?」というところには強い提言は難しいんだろうなと思った。
全世界的な傾向だしね。