半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『Extreme Teams』

オススメ度 90点
前提条件が違いすぎる…度 90点

職場の人間関係に悩むシリーズ。

アップルやアマゾン、ネットフリックス、ザッポスなどのアメリカでイケてる企業では、どのような職場文化なのか、というお話。

いずれも社歴の浅いユニークな企業文化をもつ急成長企業を取り上げている。
こうした企業は、チームのあり方、達成しうる会社としてのミッションを明確に規定し組織を編成しているわけで、
組織の目的意識という意味での純度が高い。
何しろゼロから作っているのだから、自分たちの意思が反映されやすい。

すでに確立された企業内の企業慣行よりは、理論的な純度が高いよなあと思った。
また、アメリカの雇用慣行も、中長期な雇用を奨励するものでもないので、組織のミッションから外れた人が組織を去ることも比較的簡単だ。

チームに対する様々な力学や考え・知見はかなり参考になる。

しかし、日本的組織(機能体組織よりは共同体組織の性格が強い)で、ここに書かれたことをそのまま敷衍しようとすると、多分とんでもない反発を食らうやろな。
理論はあくまで理論で、受け入れられやすい人員の質というものもある。
なにしろ、この話は、世界で最高度に生産性の高い企業集団の話なのだ。

ただ、チームという機能体を、いかにチームメンバーのやる気を削がずに維持展開していくか、という命題として、最高に生産性の高いこれらの企業のあり方は、知っておいて損ではあるまい。
下町ロケット』の佃工業が、「ロケット品質」といったように、最高に優れた製品は、それほど優れたものが要求されない場面でも、強みを持つと思う。なので、今の組織文化の皮相的な部分に取り組む際にも、優れたチームの普遍的な要素を取り入れることは、なにがしか意義はあるだろう。

まあ、今の自分が直面していることなんて、とてもここでは書けない低レベルな話なのだけれど……
しかし、チームを良好な状態に維持するというのは、どの企業においても普遍的に苦労することのようだ。
それがわかっただけでも十分だ。

以下、備忘録:
自分の勉強用に抜き書きをしたもので、これ単独では意味がない。
興味があればぜひ一読されたい。
・人間はそもそも社会的な存在で、小さな集団の一員となっている時に人は一番居心地よく感じられる
・チーム制というのは、足りないというよりは導入されすぎるきらいがある。
・チーム制が適した場面だとしても、チーム制を成功に導くサポート(ボーナス)を導入していないことも多い
・チームを円滑に動かすためには組織全体と上層部のリーダー陣が、慎重にチーム運営の体制を整える必要がある
・よくあるのが報酬制度が裏目にでるパターン
・チームの一員になると熱心に働かない・努力不足を他に責任転嫁する者もでてくる。
・社員を追い込みすぎるーひょっとすると社員が自分自身を追い込みすぎてしまうパターンに気をつける
・信頼が薄れ始めると、会議に出なくなったり、会議中にスマホをいじったりする時間が増える。特に多部署の人に対して無礼になる
・採用は、能力だけでなく、組織への適性を見る必要がある
・社員はチームではあるが、家族ではない。
・少数精鋭になることで、誰かの不手際をフォローするための雑務が不要になる(人員を増やせばいいというものでもない)
・「社員がこれまでどう貢献してきたか」ではなくあくまで「これからどう貢献していけるのか」忠誠をささげるべきは未来であって、過去ではない。
・財務的成果への過度な注力は間違った判断につながり、長い目でみて良い結果に結びつかない。
・社内の「社会関係資本」=結束型、橋渡し型、意義信頼型、チームメンバーとの絆は、リーダーシップに勝る
・過剰な成果主義は、チーム内の個人を疲弊させやすく、倫理的・法的な境界線を踏み越えやすくなる。
・ただし、人間関係を過剰に重視すると、集団思考に陥りやすい(多様性がそがれる)。結びつきが強すぎると、むしろ業績はある時点で下がる。緊密な絆は仲間同士の過剰なかばい合いを産む可能性もある。また、問題や懸念の解決よりもチームへの忠誠心が優先される場合がある(身内と部外者をわけたがる)。人間関係の過剰な重視は心理的な負担につながる場合がある。