半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『人事部はここを見ている!』

オススメ度 50点
昭和…度 50点

人事部はここを見ている!

人事部はここを見ている!

  • 作者:溝上憲文
  • 発売日: 2015/06/27
  • メディア: 単行本

ここ最近職場の人間関係に悩んでいるシリーズ。
これは数年前に買ったものだが、途中やめになっていたやつを読み返してみた。
2015年刊行の本。

う、うーん。
ええと、割と古いスタイルの人事部のあり方を掴むにはすごく役立つかも。
そうね、社員200-1000人くらいの「フツーの会社」で、例えば人事部に配属される、となると、こういう本が役立つのかもしれない。
人事部の概要をつかむのにはちょうどいい。
問題は、この本の内容の多くは今はアップデートされており、法律的にも「同一労働・同一賃金」むしろ欧米型の雇用慣行にシフトしようとしている。
つまり、時代への即応性が求められる大企業およびベンチャーではこの本の内容はもはや当てはまらない。ただ、大きすぎず小さすぎずの会社は、こういう一世代前の制度のまま人事を動かしているところはまだまだあるだろう。そういう会社に勤めている人にこそオススメだ。


例えば、ちょっと前に取り上げたこの本は、因習的な人事制度に対するアンチテーゼとして書かれている。
halfboileddoc.hatenablog.com
もともとの因習的な人事制度を知らないと、ぴんとこないのだ。

もう15年くらい寝かせておいて読み返したら「へー昔はこうだったんだ…」と驚愕するんだろう。
ただ、今の制度もその一世代前の慣行のバグを補完するために改良されている。以前の時代との差異を理解するには、以前の「あたりまえ」を知ることも大事だ。
それに2000年くらいから2015年までの人事・賃金に関する法律の変遷や常識の変遷についてもふれているの。
時代認識の整理のためにも役立つと思う。
採用のコツ、人事評価のコツ、海外支店での就職事情、リストラの方法とか、内容も多岐に渡って、お得ではある。
ただし体系だった知識ではない。

ちなみに、巻末10%くらいは、いわゆる「人事部黒歴史ファイル」みたいなやつ。
人事でよくあるトラブルケースのケースレポートになっていて、妙になまなましく面白い。
まあ実際何百人もみていると、著しく偏った性格・遵法感覚の人は必ずいるので、そういう人にどう対処し、無害化するかというのは人事部の大きな仕事だとは思う。

以下、備忘録:
・役員を輩出しやすいのは人事部と経営企画部
・上司におべんちゃらをいうだけの茶坊主はせいぜい課長どまり
リスク管理ができる人、上に対しておべっかを言う人ではなく、上からも下からもかわいがられるような愛嬌がある人
・有害管理職「丸投げ型」「土下座型」「恫喝型」「年上尊重型」
・組織を健全な形で維持するためにだらけた課長・部長の異動を3年ごとに意識的にやり、あえて組織を壊すことをやっています
・「温室育ちのコア人材」>業績不振の海外支店の再生役には一番手に傷をつけたくないので二番手・三番手を派遣する→苦労していないので、会社全体を俯瞰できない事業部エゴ丸出しの役員になってしまう
・30歳までが平坦なロードレースだとすればそれ以降は障害物レース
・管理職の評価=部下と同僚の多面的評価、部署のストレス診断、職場の残業時間の3つを参考に
・給与に占める法定福利費は16%を超えており、今後も増えてくる。可処分所得激減。
・2014年に改正厚生年金法が施行され、多くの基金が解散する方針
・体育会系は人事部に好まれやすいが、それは「不条理な世界」を経験しているから (不条理だらけの会社人としての耐性を備えているから…この辺は今ならバッシングされそうですね。

* * * *

 あくまで実務的な知識が中心。
「ごちゃごちゃいわずに手動かせ!」の世界というか…
哲学的なというか、思惟の部分はかなり少ない。
その意味でこの変わり行く時代の中で、陳腐化しかかっているのは否めない。