半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『「事務ミス」をナメるな!』

オススメ度 90点
医療安全の担当者は読んだらええんちゃうか度 100点

「事務ミス」をナメるな! (光文社新書)

「事務ミス」をナメるな! (光文社新書)

  • 作者:中田亨
  • 発売日: 2011/01/18
  • メディア: 新書

これも、Kindleにて購入。
ヒューマンエラーの専門家。
工業系の会社は事故防止の努力を長年続けていて、ミス防止の知識と経験を積んでいるけど、文系の会社の方はミスへの免疫が弱い。
仕事からミスを取り除くテクニックや体制作りの方法論の本。

読んで驚いた。医療の「医療安全」とかに使えるTIPSが満載だ。
工学的なアプローチを制度設計に利用するという意味では、医療も工学畑のようなものである。ただ、医療現場の専門職は理系感が乏しく、割と文系的なふんわり感(業務の多くが対人援助職なのだから無理もない)で仕事をしている人も多い。

で、医療安全の教科書とか資料って、だいたいルーツがおんなじもんだから、おんなじようなことしか書いていないんだよな。
この本は医療ではない分、総論というか、本質論から始まっているので参考になることがたくさん。
帳票が入り組んだ構造になりやすい経緯とか、激しくうなずきながら読んだ。

姉妹本の『マニュアルをナメるな』も読んでみよーっと。

以下、備忘録ー
・普段我々は「勘」で選択している。勘は論理学的には不十分な思考ですが、実用上は役に立つ。
・思い込みはしばしばミスの原因に。仕事に過剰に適応することもミスの元凶に。
・桁は多いが変化の少ない番号データは雑に扱われる
・漢字「反訓」に注意
・理性は多くの事柄を対象にできるが、欲求は一つの事柄しか取り扱えない。(行為の統一が必要)
・ルールが役に立つのかどうか(実用上は無意味で間違いの原因になるだけの規則はしばしば存在する)
・事務ミスは、不正な値引きなどに利用されることもある(内部統制を厳格化する意味でも事務ミスを減らすことは重要)。またプロジェクトの収支をよく見せるために経費を別の予算で落としてしまうことなどの事務操作などは、高じれば各プロジェクトの状況を正しく把握できなくなり衰退する(中世の荘園がまさにそれ、と)
・昔は「顧客に迷惑がかからない方向」のミスなら許されていたが、仕事の内容がどの方向にずれても、非難の対象になりえてしまうため、近年は容認されなくなっている。
・仕事の信頼性への要求も上がっている
・仕事の「確実性」と「便宜性」には、トレードオフの関係がある
・解決策はしばしば隠れていた別の問題を引き起こす
・6つの問題解決(本書を参考にされたし)
・事故を防ぐ力は「異常検知力」「異常源逆探知力」「作業確実実行力」の三つに分類される
・廃止は問題解決の基本(手順が減れば、ミスの可能性は間違いなく減る)
・「データをすぐに使わないのなら、いつでも簡単にデータをみられるようにしなければならない」
・名は体を表す「名詮自性」が異常検知のためには最も理想的