半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『確率論的思考』

オススメ度 60点
ふんわり度 80点。

確率論的思考

確率論的思考

  • 作者:田渕 直也
  • 発売日: 2009/09/20
  • メディア: オンデマンド (ペーパーバック)

アメリカは個人主義の国で、指導者には強いリーダーシップとカリスマ性が求められるが、それにもかかわらず、アメリカを築いてきたリーダーたちの多くは、チームワークを重視し、独善を廃した民主的リーダーが多い。

金融アナリストの偉い人の本。

金融の世界では、二元論(この株は上がるか下がるか)や、結果論、努力万能論で論じるのではなく、蓋然性的な思考で冷静にことにあたらなければならない、というお話。不確実性を忌み嫌うのではなく、不確実と切って捨てるのではなく、蓋然性を定量的に評価して、重層的に未来のシナリオを構築しなければいけない、という話。

確率論的思考。題目もコンセプトも、いい。
経済学の話だと思ったら経営学の話だった、みたいな肩透かしを味わったね。

確率論的な、という言い方をするのだから、確率・統計などの数学的なイシューについて具体的に論じていくのかと思ったら、
具体的にな蓋然性思考、確率論的思考の実践はかかれていなくて、コンセプトや心構えが書かれている。
確率論、(というより、むしろ文系的な用語である蓋然性思考)的なセンスが必要だよねー、なんていう、精神論というか、ふわっとした話に終始していたのは残念だった。

・不確実性、についての概論
・確率論的な思考の妨げとなるバイアス(結果論、二元論、因果論、努力万能論、わずかな確率を過大に評価しがちな思考、過度な単純化など)
・歴史上の人物の行動(主にリスクマネジメントの点で)と確率論的思考について。カリスマの陥穽、多様性の勝利。
認知バイアス、ギャンブラーの誤謬、フレーミング効果、自己奉仕バイアス、ヒューリスティック
・「集団思考」(同質性の高い集団がストレスのかかる状況におかれると、危険を顧みない無謀な行動や杜撰極まりない計画に結びつきやすい)
・不確実な世界では、長期的な視点が大切(試行を繰り返すと、一定の値に収斂するから)
・致命的な失敗をしないために、小さな失敗はむしろしておかないといけない。

ええと、いいことはいっぱい書いてあるんです。
経営学的には読んでよかったな、と思える本ではありました。
ただ、一冊を通して「これを得た!」という確かな実感が得にくい本だった。
読みやすさを犠牲にしても、もうちょっとメッセージを押し出していくべきだったのかもしれない。
いや、でも入門編のような本だからなあ…
 この方は金融工学の本を沢山出しておられるので、もうちょっと手強そうな本を読んでみようと思う。
 この人の真髄は多分そういうところにありそう。