オススメ度 90点
ま、しかし全然実生活に影響のない知識度 100点
土 地球最後のナゾ 100億人を養う土壌を求めて (光文社新書)
- 作者:藤井 一至
- 発売日: 2018/08/17
- メディア: 新書
著者は「土」の専門家。
そういえば、土って考えてみたことがなかったな。これまでも色々な土壌についての著作をされていらっしゃる。
土とは何か?という概説が半分。
残り半分は、世界に12種類あるという土に、裸一貫スコップ一本もって著者が出会うというビルドゥングスロマン。
(体験も含めた概論)
- 火星の土のテラフォーミングとかNASAが試みてるけど、地球の土もがんばってまっせ。
- 世界の土壌を大まかに分類すると12種類
- 土壌とは岩の分解したものと動植物の死骸が混ざったもの(火星の土=命のない土の材料はレゴリスという)
- ミミズは腐食と粘土を混ぜて食べ、フンはムコ多糖類のネバネバが含まれるので団粒となる
- 腐食は黒色、砂は白色、粘土は黄色・赤色
- 土壌の研究者は金がない
12種類の土の紹介は非常に面白かった。もともとこの分野の知識がないこともあるが、学問として非常に奥が深いことが垣間見られ、飽きない。これ、世界地理を勉強する前に知っていたらかなり重層的な知識が得られるんじゃないかな。
グールドの一連の著作で、ミミズがすごい大事ということは知っていた(ダーウィンの最後の論文はミミズに関するものである)
- 作者:チャールズ ダーウィン
- 発売日: 1994/06/13
- メディア: 文庫
それにしても、将来の人口過密時代、100億人を食わせるが可能か?という命題から土壌のことを考えると、色々な難問であるね。
肥沃な土壌は限られている。さらにそこの降雨量が少ないと収穫は見込めない。
しかし、土壌は資産そのものでもあるがゆえに戦争の争点にもなりうる。古来肥沃な大地は戦争の原因になっているものでもある。
さらに土壌は耕作すれば地中のミネラルを使い消耗してしまう。
多くの意思決定者が介在する難問で、学問的な知見通りにはいかないんだろうな。
100億人を安定して食わせ、なおかつ継続するためには、本当は世界政府のよう合意意思決定システムが必要なんだろうとは思う。
日本はさすが火山国家。酸性土壌などクセは強いが、マグマ由来の鉱物資源のミネラルも多いため、肥沃な土壌の潜在能力は高い。水も多いし、我々が経済発展したのには、やはり自然に恵まれている要素も大きいようだ。
子供の頃に、軍艦島の廃墟を映し、「資源のない国日本」みたいなCMが昔あった。あれは欺瞞だよな。上をみたらキリがないが、日本は資源のある方っちゃあある方だよ。