半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

自然界のすげえアレ 2冊

Kindleで、新書を買う。
比較的狭いトピックについて、初心者向けの知識をまとまって得ることができるね。

子供の頃僕は新書をすごくよく読む子供だった。
社会人となり、21世紀に入ってからはもはやそれほど沢山読みはしないが、子供の頃に、そうやってかなりガッチリと入った知識がUpdateされているさまをみることは実におもしろい。

今の自分は自分の立ち位置も固定されていて、将来に余白などはない。
こういう好奇心の芽を思うがままに伸ばしてゆくことはできない。
かつて「多能性幹細胞」であった自分の過去を振り返り
「今の自分ではないなれなかった自分」に思いを馳せてみよう。

Kindle版はコチラ。

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たたかう植物: 仁義なき生存戦略 (ちくま新書)

たたかう植物: 仁義なき生存戦略 (ちくま新書)

自然、特に植物に関する本二つである。

1つ目は、どちらかというと工学的な話が主。
ほら、最近住宅メーカーの開発した、カタツムリの殻の表面構造から着想を得て、汚れが付着しにくい壁、とかあったじゃないですか。
ああいう自然界での最適化されたデザインの美しさ、みたいな話。
以下は自分用備忘録。

  • 構造色
  • ロータス効果、ペタル効果の話
  • シロアリのリグニンの話
  • クマが鮭をとる時に、どうみても沢山とりすぎてるんちゃう?という疑問から、あれは捕獲した鮭をモリに資源として返しているのではないか、里山→海の循環、その逆に海から里山へも循環しているという話。
  • ディオスコリン、
  • ハダカデバネズミの長寿の話
  • ヤゴの話


もうひとつの話は、植物界の進化の総論的な話で、これまた知らないことが多く、勉強になりました。
著者の稲垣栄洋氏は、多数の入門向けの著作もあるが論文も多数の植物学全般に詳しい方。
僕が小さい頃に読み漁っていた科学本から、学問は随分進化しているようだ。

  • 雑草(Weed)の定義。雑草とは本当はそんなに強くない草である(ニッチをねらっている)。光発芽性。
  • イネ科植物の進化(600万年前にケイ素を取り込み硬くなることで草食動物に食べられることを防ぐ方向に進化。草食動物の大絶滅の一因に。
  • 昆虫と受粉の共生関係。果実の戦略と進化。果物の赤い色、唐辛子は鳥にしか本来食べられなかった話。
  • アブラムシとアリの関係。
  • 捕食者を出しぬく戦略。ドングリの「生り年」と「裏年」の話。
  • 植物の出している各種の化学物質の話。
  • マメ科の根粒、レグヘモグロビンの話。
  • S戦略・R(ルデラル)戦略。
  • 光合成のC3回路とC4回路の話。

総花的なところもあるが、非常にわかりやすく「植物すげえぜ」の学問的に解明された部分を紹介してくれているので、大人がとりあえず知識を入れるにはちょうどいい塩梅にかかれていると思いました。実用的*1な意味でオススメ。

40歳も超えると、ふりあげた知的好奇心のもって行き場に困る、ということもある。
この2冊はそういうおじさんおばさんにはちょうどいい本だと思いました。

*1:何実用かしらないけど、まあ、知識のかけらとして