オススメ度 80点
「孫育て」の必然性きっつー度 100点
絶滅の人類史―なぜ「私たち」が生き延びたのか (NHK出版新書)
- 作者: 更科功
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2018/01/08
- メディア: 新書
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ここ最近の人類学の進歩とか発展というのは、僕らの想像を超えている。
ネアンデルタール人との交雑とか、バスク人がクロマニヨン人の末裔ではないか?みたいな話とか。
10年くらいの単位で、従来の考えを覆す発見が繰り返されているので、正直よくわからない。
はっきりしているのは、現在の人類は黒人だろうが白人だろうが、有色人種であろうが、ほぼ単一種であるということ。
化石で発見されている霊長類は、従来考えられているより随分多いのだが、チンパンジーよりも近縁の種族が25もいたことがわかっているが、それらはすべて絶滅している。我々人類は、なぜ近縁種が絶滅している中で発展したのか。
比較解剖学的な話を交えながら、人類の祖先、(現時点でわかっている)人類の歴史に迫る本である。
真相はまだわからないが、近縁種の絶滅は、現生人類(つまり僕ら)が引き起こした可能性が強い。
ま、そういうことを書いていると、本の内容の剽窃になってしまうので、詳しくは読んでみられたし。
この手の本の中では長くもなく、読みやすい部類だと思う。
一つだけ。
外来で患者さんが、「孫の子守で大変で…」なんていうことが結構あるのだが、
アフリカの原生人類であるアウストラロピテクスは、肉食獣にかなり食べられていたらしい(その頃は石器も火もなかった)。それでも人類が絶滅しないで済んだのは、出産間隔が非常に短いから。(チンパンジーの出産間隔は5〜7年、オランウータンも7〜9年、人類は、今も「年子」がいることでわかると思うが、2年要しない)。食われることを多産で補い、絶滅をまぬがれた。
なので人類は多産できるように進化している。
しかし一人でそれだけ多くの子供を育てるのは不可能。そこでヒトは共同で子育てをするシステムを作り上げたんではなかろうか。
「おばあさん仮説」というものがある。多くの霊長類は、閉経せず死ぬまで出産するが、人類は閉経後子供が産めなくなってからも長く生き続ける。
これは、ヒトが共同で子育てをしてきたために、進化した形質だ、という仮説だ。
ようするに母一人ではたくさんの子供は育てられないが、兄弟親類、祖父祖母も加わって育てたらなんとかなる。
外来の孫育て高齢者の人たちには、「だからあなたの行動は、人類の存亡に関わる大事な行為なんですよ!」といって励ますことにしている。
ま、「おばあさん仮説」は仮説にすぎず実証されていないんだけどね。
みんな渇いた笑いで返してくれます。