- 作者: ジャレド・ダイアモンド,楡井浩一
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 2005/12/21
- メディア: 単行本
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旅先で買うサイズではないのですが、そこはそれ。読みたいもんはしょうがない。
マーヴィン・ハリスもそうですが経済学と歴史学と人類学を足したような学問には非常に興奮させられます。僕がアイザック・アシモフの『ファウンデーションシリーズ』のファンで、サイコヒストロジーに焦がれた青年時代をおくったからだろうと思うけど。
これも面白いわ!
『銃・病原菌・鉄』も面白かったけど、これもまけず劣らず。
文明の興亡、特に「亡」に関する部分には 資源の枯渇などが重要な役割を果たしているわけですが、前半ではそういう古代社会の文明の興亡をいくつかケーススタディとして取り上げています。(比較的単純で理解がたやすい社会を取りあげ、徐々に複雑な社会をレクチャーする、この辺りのくだりはいかにもうまいのであるが、実はダーウィンの『主の起源』などの手法もそうで、自然科学の包括的な書物の常套手段ではある。
一見あまり意味の乏しそうなケースを数個並べて点が線になり、物事がよく見える。そして包括的な話を語るという。
そして下巻ではそれらの知見を踏まえて、現在の我々、そう「宇宙船地球号」に乗っている我々が今後どうなるか、そして、どうやればうまく危機を回避できるか、ということを考察しているわけです。
ゆえに、この本には、厳密な結論はありません。
文明が崩壊するというのは成員の集合知を駆使してもやはり起こりうるということ。
資源の枯渇に対して、叡智を結集することで、むしろ発展することは可能であるが、最終的な破綻は、おそらく大きくなるであろうこと。
過去様々な文明が、そうした資源の枯渇を直接関節の原因にしながら規模を縮小し、「文明の後退」というべき事態を引き起こしてきたということ。
したがって、我々を取り囲んでいる現在の文明でも、同じことが起こらないとはいえない。人間の数が多いから「誰かがなんとかしてくれる」の誰かの確率は多少は増えるだろうけれども。
こぼれ話として印象的だったのは、オーストラリアについてです。
オーストラリアというと工業国ではなく、一次資源の豊富な国というイメージで、豊かな自然という印象があります。んで、鉄鉱石とかそういう地下資源は取り尽くしたらなくなっちゃうけど、農業とか漁業は循環型なので大丈夫、とか思っていたんですが、どうやらそうではないらしい。
オーストラリアは地質年代的に古いため土壌の栄養が非常に少ないために、農業にしても、漁業にしても、結構危機的だそうな。農業は、土地そのものに栄養がないから肥料をつっこまないと作物が育たない。漁業も、陸地の栄養が少ないから、安定した漁獲高が得られない。国の施策として、農業から手を引いたほうがまだ自然破壊を食い止められるのではないかという大胆な意見も出ているほどだそうな。
ちなみに原題は "Collapse"と非常に簡潔です。
少なくとも、センチメンタルなエコロジー論よりは、余程意義があると思いました。