オススメ度 100点
まさか、こういう本で、感情を揺さぶられるとは… 度100点
FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣
- 作者: ハンス・ロスリング,オーラ・ロスリング,アンナ・ロスリング・ロンランド,上杉周作,関美和
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2019/01/11
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (1件) を見る
話題になっているこの本。当初スルーしていたんですが、Facebookで布川さんが取り上げていたのと、ちょっと所用あってリアル本屋に行ったときにパラパラめくってみて「いいじゃん」と思ったので、買った。
Factfullness=事実に基づいて世界を見よう。というのが、シンプルなメッセージ。
世界の情報を正しくしろう。
世界は少しずつではあるけれども、よくなってきているんだよ。
でも、僕たちは、そういう風に世界を見れないのはなぜだろう?
それは、僕たちが、世界の中でも、特殊な地位にいて、それ以外のレベルの世界を見ようともしていないし、触れ合おうともしていないからだよ、という話。
この本では、世界をレベル1、2、3、4に分ける。
レベル | 一日の所得 | 人口 |
---|---|---|
レベル1 | 2ドル | 10億人 |
レベル2 | 2-8ドル | 30億人 |
レベル3 | 8-32ドル | 20億人 |
レベル4 | 32ドル〜 | 10億人 |
この本を読める人達は基本的にはほとんどレベル4の世界にいる。その人達はレベル1〜3の世界のことを知らないし、知ろうともしていない。
でもレベル1〜3の人達は基本的に上のレベルに到達することを目標にして日々生活している。
実際に、しかしレベル1〜3の人達にとっては、この半世紀で世界は大きく変わっている。
ワクチンや女史の初等教育などは、僕たちが思っているよりもずっと普及している。
世界はすこしずつよくなっている、ということ、それにもかかわらず僕たちは、世界をそのように見ていない、ということをこの本では丁寧に(言い方が悪ければ、しつこく)書いてある。
我々は無知蒙昧なのだ、と。
確かにそのとおりだとは思うけど、先進国中間層に生きる僕たちが救われるわけではないよなあ、と改めて思う。
その意味では 「エレファントカーブ」の方が、我々向けにかかれているのかもしれない。
- 作者: ブランコ・ミラノヴィッチ,立木勝
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 2017/06/10
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (5件) を見る
それから、本では、レベル4の人達一般に書かれているから、あえて書かれていないけど、この話には続きがあるのではないか?ということ。
レベル4は一枚岩ではなくて、本当はレベル5,レベル6、という存在があるはずだ。
エンゲル係数や、生活費というものをほとんど考慮せず、自分のファイナンシャルプランを立てられる層、レベル5。
行きたいところに行き、食べたいものを食べ、買いたいものを買うことができる層。
仮に一日の所得2000ドルとすれば、年間所得8000万くらい。この層は、多分レベル4の人達とは、思考様式も、人生設計も変わってくる。
ただし、そこを言い出すことは、この本の主旨ではないので、取り上げられてはいない。
例えば、日本は、戦後の焼け野原から、驚異の復興を遂げ、いち早く高度経済成長をなしとげ、全国民がレベル4に到達してしまった。
しかしその時点で、経済成長がとまってしまい、レベル5向けの制度設計というものをできなかった。
(例えば、シンガポールはこのレベル5人材に対する処遇が手厚い。そのため少数の人口で、高い生産性を維持できている)
国際競争力、国際的な人物が生み出されにくい土壌は、この構造的なものではないかと思う。
レベル5の存在を認識することは、レベル4の人間にとっては多分「不愉快な真実」なのだと思う。腹立たしいことだからね。
ただ、そこをきちんと認識しないと、国際的な発展にはつながっていかないのではないか。
日本の経済鈍化は、レベル5人材に対する策のなさも、関係しているに違いない。
他所の国の問題解決なんて、他人事。どうでもいいこと。
我々が、こういう「Factfullness」な見方を手に入れることができるなら、それは自分のためにも使わなきゃいけない、と思う。
* * *
本の話に戻すが、いかにバイアスをなくし事実・統計を正確に解釈できるか、ということを噛み砕いて説明。
その中で、公衆衛生学、発展途上国での医師としての作者の活動の逸話が随所に差し挟まれる。
本の最後に、著者の人生が結ばれ、ずっしりと重い、一人の人生分の主張として、物語が終わるわけで、
はからずも、ぐっときてしまった。
これは世界について書かれた啓蒙書でもあり、しかし、きわめてパーソナルな個人の回想録でもある。
そういう意味でも、ちょっと特別な読み味がある。