オススメ度 80点
著者二人とも二児の父。僕も。共感度100点
Webで書いていた萩上チキ氏の記事は以前からよく読んでいた。
で、それに今話題のヨシタケシンスケさんのイラストがついた本。
なんか子供にも役立つのかなと思ってリアル書籍で読んでみた。
表紙には空を見上げている人物。それに半透明なカバーが掛かっていて、それにはメガネだけ描かれてる、凝った装丁。
僕は1974年生まれで、価値観の大きな変化を目の当たりにしつつ思春期から大人になった、「狭間」の世代だ。
それ以上の世代のがっつりした「昭和の価値観」も骨肉に染み付いているし、その後の日本の文化の変化(明確な目的の元に導かれたというよりは迷走・漂流し、分断された結果のこれだとは思う)も立会人としてみてきた。
「立会人」として、という言い方を敢えて書いたのは、我々の世代には、思想潮流を変えるプレイヤーがかなり少ない。
ちょっと前の「ポストモダニズム」というコンセプトも、コツコツ何かを積み上げて回答を出すような学問領域ではなかったのも大きい。いわゆる旧来の学問体系が地滑りを起こしている中で、僕らは大人になった。
就職氷河期、平成不況は、この世代の「高等遊民」たるべき成り手を、相当数正業に向かわしめたはずだ。
この大きな変化の潮流の立会人であった僕らは、そんなこんなで、この潮流に翻弄されるばかりで、知的にこの現象を総括できていないような気がする。でも、皆、この大きな変化を味わっているのは確かで、皆自分なりの「体験記」がある。
萩上チキ氏の文章も、そんな感じだ。
少し目的意識の少なめのエッセイ的な語りが中心だ。
語り口は常識的で、むしろ弱気な感じで好感が持てた。
我々は、自分の育ってきた行動規範がある。
伝統的な男尊女卑的、年長優先の思考や、旧来の仕事と私事に対する価値観の置き方(いわゆるワーク・ライフ・バランスも含めた)「態度」とか。
ステレオタイプからの逸脱を許さない非寛容な「世間」の考えを忖度すること、とか。
僕らはその価値観がもはや通じないことをわかりすぎるほどわかっている。
自分自身も、考え方の変化に戸惑い、自分を新しい考えに適応させるのに難航もしている。
でも、旧来の文化は、自分たちの世代で終わらせ、次世代には時代にあった価値観を提供しなきゃいけない。
だけど、結果的には上の世代と下の世代の尻拭いというか板挟みで終わってしまっている。
ホリエモンは、新しい考え方や新しい世界への適応がもっともできている人だと思う。
でも世の中にはまだまだ旧来の「昭和」的な考えが優勢なところも多い。サラリーマンの世界はそれなりに変化の潮目は終わったように思うけど、経団連とか経営層はまだまだ旧来勢力が優勢だし、政治もしかり(そりゃ年齢層が高いからな)。教育や医療は多分蛸壺化しているために変化の潮流を受けていないが、これから大きく変わっていくだろう。
ちっとも本の紹介になっていないが、そういう文化規範の変化にさらされてきた人間(まあみんななんだけどね)の率直な記録だと思う。