オススメ度 100点
『クロ現』の立役者の一人ということなんだよな…度 100点
あるいはこう言い換えてもいいだろう。
『クローズアップ現代とわたし』。
NHKの看板とでもいうべきドキュメント番組である『クローズアップ現代』のキャスターを務めて20数年。
2016年に交代したが、クロ現といえばこの人。
この方はクローズアップ現代で現役の時は、ほぼクロ現のみに注力していて、他の活動に目立ったものはない。
そういうわけで、クロ現といえばこの人(国谷さん)、この人といえばクロ現。
クローズアアップ現代は、どちらかというとキャスターのキャラクター性は薄く、政治性としては無色、という印象だった。
この人の本を読めば、イデオロギーありきではなく、「本音を引き出すこと」「隠れている真実を伝えられないか」ということには腐心しているけれども、特定の主義信条に基づいたインタビューではないわけだ。
我々は「癖の強い」ものに目が止まり注目する傾向にある。
先輩が言っていた。
「お酒でもな、甘口なやつーとか、辛味がスッキリしているものとかが目に止まるけど、それはキャラが立っているだけ。ほんとは甘くも辛くもないところに上手い酒が隠れてんねん。なんとも表現しにくいところのやつが美味い」
クロ現もそういう番組で、中道なおかつ入って行きやすい番組なのだがさりげなく練り上げられた質の高い番組だと思う。
この本で国谷さんは自分の人生も総括している。
帰国子女で日本語を話すことが苦手だった時代、NHKのアナウンサーに抜擢されたけど結果が出せず降板した時代。通訳の学校などに通い自信を取り戻し、著名人にインタビューを行っている仕事を任されるようになったあと、クローズアップ現代の立ち上げに関わるようになった話。
淡々とした語り口ながら、この方なりの苦労や挫折、成長をきちんとステップを踏んで成長したんだなあ。
だからこそ、クローズアップ現代のアンカーとして、3000本を超えるドキュメントを淡々とこなすことができたんだなあと感じ入った。
クローズアップ現代も、国谷さん自身も、非常に淡々としたもの。
「君子の交わりは淡きこと水のごとし」といったところだろうか。