オススメ度 60点
同世代しばりだ度 100点
団塊ジュニアのカリスマに「ジャンプ」で好きな漫画を聞きに行ってみた
- 作者: 岩崎大輔
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2013/07/26
- メディア: Kindle版
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なんとなくAmazonに「お前こんなん好きなんやろ?」的に勧められてしまった。
はい、認めましょう。好きです。
看板に偽りなく団塊ジュニア世代のトレンドリーダー達にインタビューしたもの。
新井史郎・高島宏平・川辺健太郎・鳥越淳司・清水康之・山本太郎・朝比奈一郎・稲見昌彦・カラスヤサトシ……
東日本大震災を除けば、団塊ジュニアの世代に共通体験は見当たらない。祖父の世代のように戦争も知らず、飢えの記憶もない。全共闘運動も資料でしか知らない。同世代の若者がひとつの目標や理念に向かって連帯することをまったく経験していない。そんなわれわれの世代の共通体験は『少年ジャンプ』ではなかろうか。
共通の時代のアイコンがないこの世代にとって共通軸になりうるものはなにか…ということでジャンプを持ってきているのだが、結論からすると、そんなにジャンプ関係なくない?と思われるインタビューも多かった。
あと、もう少し下の世代だったら、もっと男女比率、女性もでてくるはずだけれども、ここでは女性はでてこない。
ジャンプを軸に時代を斬る、といえば耳にさわりはいいが、ホモソーシャルさがやや鼻につく。
でも面白かったのは、私も1974年生まれで、この本の登場人物が皆同世代であるからに他ならない。
それなりに含蓄はあり、面白かったが、共通素材がジャンプというのもなー。
halfboileddoc.hatenablog.com
これは50代〜60代の話ではあるが、団塊ジュニア世代は、教養主義の凋落と実学志向のちょうど狭間であるのは間違いなく、大学のレジャーランド化は僕らの大学時代も続いてはいた。
我々の共通軸をジャンプにしか置けないというのは、冷ややかに俯瞰すると、結局はそういうことだ。
それは、いいことか?悪いことなのか?
昔の小説などを読んでいると、大学生でもヴァレリーだのランボォだの詩の引用をしているが、では戦前から続いていた教養主義が現在も続いていたとしても、その時に引用される古典が現在も通用しているだろうかと、というと疑問ではある。
世界そのものがかわってしまったし、このデジタルの時代に、18世紀・19世紀の文学の多くはその輝きを失ってしまったから。
しかしそうはいっても、日本において知の系譜が断絶されてしまったことの意味は大きいと思う。
理系の技術大国の凋落とも連動している。
その意味では『ジャンプ、懐かしいな…』とも思うと同時に、自分たちのありようが、日本の凋落の片棒を担いでいる現実も見せつけられているようで、やや薄らさむくなる本でもあった。