半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

「舞姫」の主人公をバンカラとアフリカ人がボコボコにする最高の小説の世界が明治に存在したので20万字くらいかけて紹介する本

オススメ度 80点
いろんな意味でなげーよ度 90点

タイトルなげーよ。
しかし、本の内容はなかなか面白い。
江戸期の文学と言えば、戯作とか、文楽・歌舞伎などの大衆演劇。(能は少し敷居が高い)
明治期になったら、夏目漱石森鴎外などの「純文学」がでてきて、そして戦後に至る。

ところが、明治期には、江戸期の戯作文化の正当後継者である講談文化のような大衆文学が相当存在していたらしいのである。
もちろんクオリティも高くはなく、歴史に残るものは少ない。
が、細かいこと言わずに物語を書き連ねる面白さは今隆盛を誇る「ライトノベル」に通じるものなんじゃないか、という話。
そんな日本文学の地下水脈と言える一連の作品を、とりあげたのがこの本。

結構ジャンルは多岐にわたるので、丁寧にいろいろ紹介していると、20万字になってしまったわけだ。
しかし長いぞ。でも、多分原典に当たる苦労を考えると、20万字でも多分短いくらいなんだとは思う。

ただし『箕輪城物語』が他の講談速記本と違うのは、本筋以外の雑味の豊潤さにある。実は初めて読んだ際には、そのあらすじはほぼ忘れてしまい、面白さだけが残っているという状態に陥った。これは優れた大衆娯楽映画を鑑賞した後の感覚に非常に似ていた。私は映画の「トラック野郎」シリーズが好きで何度も観ているのだが、例えばお正月にダメな親父を、子供のもとにまで届けるエピソードが何作目のものかと考えると、どうしても思い出すことができない。もちろん個人的な資質もあるのだろうが、そのストーリーを理路整然と語ってみろと言われると困ってしまう。

途中で、時事ネタが挟まったり、森鴎外の名作「舞姫」にでてくるエリス、みたいな登場人物が、でてきたり、やりたい放題。
技術的には稚拙だが、書きたいものを書くという態度で、大量のテキストが量産されていた、という事実を初めて知った。

しかしやな。
かなり面白かったのだが、タイトルが長い上に、本文もやったら長い。結構読むのに力を要したのは確か。
そして長いものを読んだ割に、得られるものは、
はっきりいって、ないです。(笑)。
ふーんそうなんか。という。