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昭和49年生まれの私は、ファミコン世代。
ちょうどファミコンが出てきた頃がでだしたあたりが、小学校低学年でした。
*1、その後中高生から大学生にかけて、ゲームもアニメや漫画と同じサブカルチャーの一つとして取り扱われ、独自の文化圏を形成された総体を、僕たち団塊ジュニア世代は貪欲に吸収したものである。
ゲームをサブカルチャーのリテラシーと繋ぐ一つのメディアが『ログイン』であり『ファミコン通信』であった*2。いわゆるアスキーの文化圏だった。
桜玉吉はこのアスキー文化圏のイコンの一つだったと思う。
桜玉吉『しあわせのかたち』がいかに我々ティーンを惹きつけたか。
* * *
しかし、そんな黄金の80〜90年代を過ごした玉吉氏も、我々の世代が「ロスト・ジェネレーション」と言われるのと奇妙に機を一にして、21世紀には失速してゆく。
『しあわせのかたち』の後半で「しあわせのそねみ」というアニメ画調からリアル路線に舵を切った回が話題になったが、
以後の桜玉吉漫画では、このリアル路線・うつ路線が基調になってくる。
プライベートでは、離婚したりいろいろあったようだし、うつ病的な状態もはじめ、精神的に不安定になってゆく。
徐々に漫画も迷走してゆく。
『幽玄慢玉日記』の頃はまだよかったが、コミックビームという、あまり先のない漫画誌*3での活動を続け、しかし鬱病が悪化し、漫画そのものがかけなくなって、我々の視界から消える。
むかし『しあわせのかたち』をティーンの頃に楽しんでいた我々も、大人になる。
リアルな世界で、家族をなしたり、仕事で忙しかったり。
ふと気がつくと、桜玉吉氏、細々と活動を続けている。
諸事情で「漫画喫茶」に詰めて執筆している状態から、伊豆に昔買った別荘(今は廃屋に近い)に隠棲している現状を、
淡々とした筆致で描く様をみられるのが、ここ近年の作品群だ。
週刊文春むけ、とコミック・ビーム向け。
今はそんな感じで展開しているようだ。
つい先日、21世紀的な生き方で成功した「大江千里」を紹介したが、
halfboileddoc.hatenablog.com
桜玉吉は、21世紀に入って、ギアチェンジをしそこなった人だとは思う。
今はそれなりの生活が垣間見えるが、
これは寓話の『アリとキリギリス』のキリギリスの末路をみているのだろうか?
青春の残滓、チェットベイカーの晩年をどうも重ね合わせてしまう。
20世紀から21世紀、社会のあり方は大きく変わった。その中で、うまく変革の波を乗り切った人もいるし、うまくいかなかった人もいる。能力の有無も、運のよしあしも、助けてくれる友人の多寡もあるだろう。
それはそれで、一つの激動の時代を生きた証として、読めばじんわりとするのは、自分も歳をとってしまったからなんだろう。
* * *
不思議なことに、この人は絶対にネットにリアルな自分の画像が出ない。
でたら消しているんだろうけど、ひどく巧妙だよなといつも思う。
直接お会いしたことはないのだが、イケメンらしい。