「暗黒・中国」からの脱出 逃亡・逮捕・拷問・脱獄 (文春新書)
- 作者: 顔伯鈞,安田峰俊
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2016/06/20
- メディア: 新書
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考えてみると、日本って、幕末に開国してから、基本的にはヨーロッパ・アメリカの西洋文明に沿うような形で発展してきた。
産業革命、プロテスタンティズム、プラグマティズムなど、白人の倫理体系を、基本的には丸呑みして法制度を作り上げた。
もちろんこの背景には、日本は東アジア儒教文化圏の中でもやや特殊な立ち位置で、独自発展を遂げ、意外に西洋文明との親和性が高かった背景もある。
梅棹忠夫「文明の生態史観」の謂いだが、イギリスと日本は結構似ている。
「第一地域」*1の周辺に位置する「第二地域」で同じような文脈で発展を遂げた、という説だ。
だからこそ、現在の我々日本人は、個人の自由に重きをおく民主主義社会、市民社会制度を当たり前に受けいれられる。
それは、西洋文明・産業革命のような近代文明は、自由な個人の精神からしか生まれ得ないと思っているからだ。
ところが、中国は、我々の所与の如くに考える発展段階の軛から自由である。
西洋文化のお作法を無視して、しかも、それでわりかしうまく国をまとめている。
ただ、それゆえに中国では民主主義は当然の権利とはされない。
民主活動家はそのまま反政府活動家とみなされる。
人権を要求するだけで、中国では反政府活動とみなされる。
この本は、一人の民主運動家が、中国の公安当局に目をつけられて、逃亡した顛末を手記にしたものの翻訳。
単純に中国政府こわいなーという読後感だが、僕は、あれだけの人口を民主主義でまとめ上げることは難しいという意見に賛成なのである。
単純に政治手腕として考えると、中国の政体って、西洋史観にしばられず、自らの達成目標に対して柔軟かつ貪欲だよなあとは思う。
もちろん僕も中国の人民として、拷問も、人権を剥奪された状態にもなりたくはない。
一人一人の人権が尊重される方がいい。
でも、民主化運動で、実際政体が変わりうるかは、ちょっとわからないな。
それにしても現代の話。
中国はキャッシュレスがすすみ、なおかつサイバーセキュリティに強いので、ネットにアクセスすると公安にみつかってしまう。
しかしネットなしで見知らぬ街を逃亡するのはなかなか難しいようだ。大変だな。