ピースインザ警句を愛読していたが、小田嶋隆さんが亡くなってちょうど一年みたいだ。
良くも悪くもこの人はコラムニスト、という言葉がしっくりくる人だった。
安倍政権になってからの政府やマスコミに対して冷ややかな視線を考えると、左寄り、という風にも思われるけども、そうではなく、ダメなものに対して一貫して冷笑的な人だった。
お友達だからといって筆を曲げる、ということはなさそうで、それゆえに、幅広い交友関係という感じでもなかったように思う。一見して、生き方としてはそれほど功利的ではない。そういう意味での文章の凄みがあった。
しかし、ニュートラルな視点というのは、しがらみのない視点とも言えるわけだけど、それって、意思決定の中枢には近くはないわけで、床屋政談的な感じにどうしてもなる。
小田嶋さんは、そういう床屋政談的リーグのトップには位置していたとは思う。
タイトルは『超・反知性主義』安倍政権における安倍氏の行動・態度に対してばっさり切って捨てていたのがこの2016年刊行のピースオブ警句のまとめだ。
しかし、「反知性主義」という用語をどうも曖昧に使いすぎるなと思い、本来米国での「反知性主義」の文脈をさらっておくことにした。
「反知性主義」というのは、トランプ大統領、トランプショックを境に使われ始めたが、実は
アメリカの思想潮流にはこの反知性主義こそが、ヨーロッパに対するアメリカのダイナミズムの原動力として重要な地位を占めているらしい。
以下備忘録。
- 「反知性主義」は本来現代アメリカ社会を分析するために使われた用語
- 反知性主義を理解するにはアメリカの建国史や宗教史を知っておく必要がある。
- 「反知性主義」は知性そのものではなくそれに付随する何かへの反対。社会の健全さを示す指標だった。
- リチャード・ホフスタッター著「アメリカの反知性主義」
- 「キリスト教」のアメリカ化 (契約)
- ピューリタニズムの「知性主義」、アメリカ全土の「信仰復興運動」(リバイバリズム)>反知性主義の勃興
- ピューリタニズムは説教運動として出発したため、ニューイングランドは人口あたりの大学卒業者が異常に多かった
- アメリカにおける「政教分離」
- リバイバル運動は、極めてアメリカ的な、平等があり、学歴などを問わないダイナミズムがあった
- キリスト者の自由は宗教的な領域における自由であって、その自由が一直線に市民的自由へと発展したわけではない
- アナバプテスト メソジスト・バプテスト
- セクト型、チャーチ型のシステム
- 自然との連続性の喪失は知性の腐食を意味する(アメリカ的な哲学観)「ソロー」「森の賢者」
- 西部の無学な荒くれ男と評されるジャクソン大統領=アメリカの反知性主義文脈において重要
- 反知性主義は大衆の潜在的な感情から養分を得て成長する
- アメリカには高等教育を受けた知的エリートはともかく、代々世襲で受け継いでゆく「知的特権階級」が存在しない(ヨーロッパとの違い)
トランプが大統領になった時に「アメリカはもう終わりだ」みたいなリベラル陣営の嘆きも聞かれたけれど、
実はもう少し大きく歴史を眺めてみると、アメリカにおいては、知的階級の固定化という動きに対して、反知性主義的な動きは過去何度も起こっている。それこそがアメリカという国の特色であり、強みであるということらしい。