半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『刻刻』堀尾省太

刻刻 コミック 1-8巻セット (モ-ニングKC)

刻刻 コミック 1-8巻セット (モ-ニングKC)

Facebookとかやっていると、「漫画が無料で読める!」みたいなアプリの宣伝がよくありますね。そこで割とおもしろげな漫画が取り上げられてて、だからまあKindleで読んでしまう。そうすると、なんか、一見目を惹くどぎつい漫画ばかりが増えてゆくわけです。割とわかりやすい展開ですよね。
そういう漫画ばかり読んでいると、購入傾向からの「Amazonのオススメ」というリストも、そんなどぎつい漫画ばっかりになるのな。悪循環です。

『村祀り』『死囚獄』『ギフト』『生贄投票』『監禁嬢』『奈落の羊』『死役所』『蝶獣戯譚』…悪貨は良貨を駆逐する…とまでいうと言い過ぎであるが、共通点は屋台のジャンクフードのように、読み手をぱっと惹きつけはするけど、それ以降の展開力にいささか難があり、今ひとつ深みにかけること。
 そういう読み味の連続にやや辟易としていました。
 なんかね、読めば読むほど頭が悪くなっていく感じがあるんです。
 あ、『死役所』は面白かったですよ。

しかし『ゴールデンゴールド堀尾省太はかなり面白いなあと思いました。なにより舞台となっている向島〜備後地区が地元なので、そういう意味でもぐっと来た。やっぱり地元びいき的なものってありますわな。
 冒頭のシーンのアニメイト福山駅前の元トポスのビルのアニメイトや!僕がよくいくカラオケの建物や!とか、そういうのもちょっと嬉しかったんですけれども。

で、堀尾省太出世作*1

寄生獣』の岩明均、『アイアムアヒーロー』の花沢健吾絶賛!

という釣り文句に惹かれて *2、『刻刻』を読んでみたんですが、面白かった。
うーん、なんというか、先程の作品群と比べ「読めば読むほど頭がよくなっていく」感じはしました。

 時間を止め、その中で活動できる能力をもつ一族と、別の集団と、その戦いと言うかなんというか。
 そういう設定だと、何度も時間をとめたり戻したり、みたいに、プロットの中で能力を使うのかなあと思っていたら、そうではなくて。
 そういう設定の中でダレもせずストーリーがぐいぐい動いて、一気に読ませられてしまいました。ものすごく完成度が高く、きっちりしています。「ライオン仮面」的な要素 *3全くなし。 

 連載時にはアンテナにひっかかっていなかったのが悔やまれます。まあ、モーニング・ツーだもんなあ。
 最初の印象では、第一巻の序盤のところだけ、やや展開が早くて不親切かな?と思いましたが、そのあと十分没入できたので、別にいいんだと思った。「?」を残しながらストーリをすすめるのもテクニックですよね。

*1:というか、そんなに出世してないのでなんですけれども、

*2:アイアムアヒーローの終わり方で若干「…」となってしまったので、この釣り文句は今現在相対的にやや価値が減弱しているようには思うが

*3:どらえもんの漫画中漫画で、フニャコフニャ夫先生は締め切りに追われるあまりストーリーなんか無視してでたとこ勝負で毎週切り抜けている、という設定