半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『美食探偵 明智五郎』

東村アキコはでる漫画でる漫画、わりと読んでしまう。この前はハイパーミディを読んだ。
halfboileddoc.hatenablog.com
これは別マで連載中の「美食探偵」という漫画。

美食かー、と思ったのが第一印象。
正直、今はマーケットにグルメ漫画が飽和している。

グルメ漫画の多くは、ストーリー運びが遅い。
このBlogでは取り上げていなかったが『メシバナ探偵たちばな』も、いわゆる刑事ものにグルメ(しかもB級グルメ)を組み合わせた快作で、作風も安定。
金太郎飴的なストーリーの動かない世界観で、色々な食材に関する話が、延々と続く(逆にいうと続けられる)構成になっている。
逆に言うと、終わらずになんぼでも続けられるようになっている。
この手の漫画の金字塔といえば『美味しんぼ』なんだろうな、やっぱり。
ストーリーは動かないか、ゆっくりとしか進まない。
一旦パターンを決めちゃうと、あまり考えずに漫画を描けて、しかも部数も安定するこういう「安定物件」は、多分漫画家のポートフォリオとしては必要なんだとは思う。

この漫画はそうではなく、良い意味で予想を裏切られた。
ルパンと銭形警部みたいな感じで、主人公である、美食探偵(というか、食に重きを置いているというよりは、良家の子弟が探偵をやっている設定が重要だったのではないかと思う)と、それに対抗する黒幕的なファムファタルとの対決漫画。
推理・探偵小説の漫画ではなく、ノワール系といえばそうなのかもしれない。

主人公の明智五郎も、ファムファタル的な敵役も、やや芝居が大仰ではあるが、キャラも立っていて面白い。
展開もスピーディーである。
十年一日の安定物件としてのグルメ漫画ではなく、多分6〜7巻くらいで完結するような起承転結。(今は5巻まででている)
はなから、ジュブナイル向けマーケットのテレビドラマに取り上げられるのを狙っているような作品だ。

そういう意味でも東村アキコは本当にうまいなあ。
同時に何作もストーリー漫画を並行して走らせるのって、すごい大変なんだと思うけど。

美食探偵 (角川文庫)

美食探偵 (角川文庫)

ちなみにこちらは全然別の話で、「美食探偵」繋がりで読んだ。
主人公は明治の話で、割とオーソドックスな推理小説もの。
美食なのはやはり明治期なので良家の子弟。
 悪くないのだが、書いている人が現代なので、正直にいうと明治の時代感はあまりでていないと思う。