半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『ひとりでしにたい』カレー沢薫

オススメ度 90点
リアル度 100点

ひとりでしにたい(1) (モーニング KC)

ひとりでしにたい(1) (モーニング KC)

カレー沢薫については、以前から微妙に注目していた。
halfboileddoc.hatenablog.com
『やらない理由』カレー沢薫 - 半熟三昧(本とか音楽とか)
『猥談ひとり旅』カレー沢薫 - 半熟三昧(本とか音楽とか)

だいたいは腐女子&ブスの生態エッセイと漫画の人なのであるが、
今回は、身近エッセイ漫画ではなく、終活に関する漫画。

体験漫画というか、企画がうまいな、と思った。
あと続けていれば漫画も随分うまくなるものだなあとも思った。*1
35歳の独身女子(美術館の学芸員)が、ふと自分の境遇に薄ら寒いものを覚える……というもの。
きっかけは小さい頃は憧れだった独身キャリアウーマンのおばさんが、ゴミ屋敷みたいなところで孤独死したことがきっかけ。

「もう手遅れ!」的な部分を理詰めで描写していったり、実は主人公の家庭は恵まれていることに気づかなかった…みたいな描写であったり、
普段生活している時にはなんとなくしか感じられない現実を、割と突きつけてくる漫画だった。
・息子の子供は「孫」ではなく「嫁の子供」
・孤独と不安は人間を「馬鹿」にしてしまう
・「大丈夫」は孤独死のはじまり
・「更新されない人」は自分の古い常識で若い人に平気で無神経なことをいう

取材とアドバイザーがしっかりしているからか、割と興味をぐいぐいひっぱられて読めた。
読みやすい。
というか、例えば「就活のススメ」とかいう文字主体の本の、挿入漫画として描かれているのではないかと思えるほどだ。
カレー沢にありがちな超すれ違い恋愛などもあり、そういう「お勉強漫画」だけではないストーリーも気にはなる。
続きが気になる。

*1:もちろん今でも根本のデッサンとか陰影が狂っていたりするところもあるけども、漫画描線自体はずいぶん丁寧になったのではないかと思う。いい歌詞書くけどピッチの悪いシンガーソングライターみたいな感じだ