モヤモヤしたい人は是非。
- 作者: 諸星大二郎
- 出版社/メーカー: 創美社
- 発売日: 1988/05/10
- メディア: コミック
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諸星大二郎は、自分で買う事は今まであまりなかったけど、いくつかの作品を読んだ事がある、程度の自分。おもしろくない印象は確かにいままで一度もなかったが。
なんじゃこれ…
一言で言うと、『孔子暗黒伝』というよりは『諸星大二郎暗黒伝』と言いたいような、
史実関係なしの自由闊達さ!
史実をほとんど踏まえない清々しさ、中国とインド関係なしのグローバル感。このころ、80年代は日本も今より東アジアとの関係が希薄だから、中国であろうとインドであろうとインドネシアであろうと異国ひとくくりですまされたんだなーと思ったりもしました。エスニックであれば、ディテールはそんなに重視されなかったのかもしれない。そういう時代性は感じます。
今どっかの雑誌でやっている西遊記をモチーフにしたやつは、これに比べると全然整ってますよね。
ラストのあたりはわりと「火の鳥」感がありました。
でもストーリー的には破綻しているっていうか、飛躍しすぎですごいっつーか、ついていけない。
で、あまりに『孔子暗黒伝』は、なんじゃこりゃ感が強かったにも関わらず、どうも心に残って仕方がなかったので、その前作とも言える暗黒神話を、Amazonで注文しました。
- 作者: 諸星大二郎
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1996/11/15
- メディア: 文庫
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……うーん、なるほどね。孔子暗黒伝が今ひとつ食い足りなかったけど、
これは面白い。実に面白いです。
日常からだんだん逸脱する感じが、非常に入り込みやすいです。
ええと、『ロスト・ワールド』をみて、こんなもんかなあと思ってから、『ジュラシック・パーク』をみると、えらいまとまっていて全然面白いじゃん、びっくりしたなあ、みたいな感じに近い。
主人公が大いなる運命に巻き込まれるという、割とわかりやすいストーリではあったが、 古代国家の謎とかそういうものも(考証は知らないけど)どっさり投げ込まれて、エンタテイメントとして成立している。
(孔子暗黒伝は、その期待感が強すぎて、結局テンションが上がりきらなかったか、それともテンションが上がりすぎてライトな読者が置き去りにされてしまったのかもしれない)。
まだ作画が不安定な感じもあり、初期の作品という微笑ましさもある。
あと、ラストはブツ切れというか、「どーん!」というものがない。
諸星大二郎は楳図かずおと同じで、虫瞰的にストーリーを読み進めていくと、めっぽう面白い。
でも少し俯瞰してみると、もう少し構造的には破綻していたりするところもあるけど、それはそれでいいと思う。