半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

諸星大二郎いろいろ

ずいぶん前になるが、市内の郊外型書店に出向いたときに、娘の本を買うついでに私もこれを買った。

文藝別冊の諸星大二郎特集。
いろいろあって盛りだくさん。

多分諸星大二郎は僕よりも申すこし上の世代の人がど真ん中。
僕は遅れてきた読者で、暗黒神話とか孔子暗黒伝とかは、21世紀になってから読んだ。
このムックで、今までの全作品解説などがあったので、いくつかピックアップして読んでみた。

あもくん

あもくん (幽COMICS)

あもくん (幽COMICS)

呪怨の「視線の端になんかいる」的な怖さを、もうちょっと日常性に近いところで演出した、大変怖い本。
僕はそうでもないけどこの手の怖さがだめな人は一定数いると思う。

妖怪ハンター稗田の生徒たち(1)夢見村にて

これもあまり知らないが、妖怪ハンターのスピンオフ作品。夢の世界と現実が虚々実々に入れ替わる表題作と、辺鄙な村の海女と異界……の話。
実に諸星大二郎らしい作品。ちょっとだけお色気あり(なんせ、温泉街と海女ですから)。

Box

勝手に想像しますけど、多分「Cube」が流行ったときにインスパイヤされたんじゃないか。
世界線が書き換わったり、いまどきの恋愛事情も忖度されていたり(そもそも諸星大二郎ともなると、恋愛は魂レベルでの結びつきなので、LGBTもクソもないと思う)、恐怖というよりは謎解き、というのに主眼が置かれた作品。
だけど、そもそもこの謎の建物がなぜ、なんの目的で置かれ、誰が作ったのか、ということには一切言及されない。
そこんところが諸星大二郎イズムというか、そこは、作者全然興味がないように見える。

そういう小理屈などばっさり切り捨てる感じ。
この前の「転スラ」とかと違って、「生々しいファンタジー」という感じはする。
楳図かずおもそうだけど、よくわからない論理をあっさり許容しうる、この手の人達が一番こわいと思う。

ちなみに、以前の書き込み:
halfboileddoc.hatenablog.com
halfboileddoc.hatenablog.com

以前の謂いを復活させて、ミノフスキー粒子ならぬ諸星大二郎粒子の散布度合いからいうと、
妖怪ハンター>あもくん>Box という感じだろうか。