半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

アーティスト症候群

出張に行った折に訪れた、金沢の21世紀美術館で購入。別にそこで買う必然性のない本ではありますが、結果的には現代アートを堪能し、面白く鑑賞した自分に冷や水を浴びせたような格好になった。
自分の中で、無意識にバランスをとろうとしたのかもしれない。

いつの頃からか、画家や版画家や詩人とか、そういう言い方ではなく「アーティスト」という表現が幅をきかせるようになったのだろう?

という素朴な疑問から、現状の「アート業界」の構造や問題点を、切り取った論評。

芸能人のアーティスト、代表として 片岡鶴太郎とフミヤが取り上げられており、そのDisり方が非常に痛快でありました。この人毒舌だなあ。
また「たけしの誰でもピカソ」「なんでも鑑定団」の構造分析も非常にポピュラーであるが上に興味深かった。確かに誰でもピカソは「アート病」(としかいいようがないもんね)の人達に多大な悪影響を及ぼしたようにも思う。

そして、この本は、またある種の内部告発でもある。筆者もパルコ文化にどっぷりつかり、80年代に思春期を美大ですごし、その後アート活動をしながら美大の予備校の教師をしていた経歴を持つ人だからだ。
美大に入りたい学生と予備校教師との悲喜こもごもの受験話とか、そういう個人的な体験談も面白い。

実に面白く、痛快でもあり、また痛いところを探られた気にもなる一作である。
あたしもまた、サブカル病だからね。