- 作者: 司馬遼太郎
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2005/09/02
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夏草の賦は、土佐を統一し、四国を統一し……ようとしたところで織田信長と羽柴秀吉に阻まれた戦国武将 長宗我部元親の一代記。
序盤は、織田信長などと同じで、一国人にすぎなかった立場から、周囲の城を攻め、徐々に勢力を拡大していくところが描かれる。この辺りはいかにも長宗我部の才気を感じさせられて痛快だ。
そして土佐を統一し、苦労しながら四国を統一しようともがく。
このまでは織田信長や、毛利元就の一代記とあまり変わらない。
まるで、RPGやSLGのような展開。
ところが、ここからが違っていて、残念なことに、草莽から身を立てたに関わらず若いうちに四国統一がほぼ為るところまでの才気をみせた長宗我部も、時代の波にはさからえず、織田信長、そしてそのあとの秀吉に膝を屈することになる。
これは、秀吉記などとは違うところで。
才能を持った男の挫折と屈折である。
言い換えると、この本の面白さと特異さは、天下取りのレースに参加する資格を十分に持った男の挫折した後半生にあるといえよう。
下巻は、人生の苦さ、というものをとみに感じさせられる。
そりゃあ地下人からすると、大名としてきらびやかな生活を送っているように見えるかもしれないが、天下をも望んでいたような男が、たかだか土佐一国の大名に落ち着くというのは、屈辱以外のなにものでもないだろう。
そして戸次川の合戦。
仙石秀久のまずい采配にて(このあたり、他の作品でも、司馬遼太郎は仙石という人間が実にきらいであることがうかがえる。でもヤングマガジンの「センゴク」という漫画を読んでいると、それほど駄目な人間にも思えないし、人の見方っていろいろだなあと思うのです) 息子を戦死させてしまう。
人生無常だなあ。