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多分、過食症の人って、一旦食べだしたらフリがついて止まらないということがしばしばあると思うのだけれど「過読症」と自己診断している自分も一回読み出したら止まらない。
このまえの大型出張中に司馬遼太郎を読んだのだが、それをきっかけに『項羽と劉邦』(これは僕が中一の時に読んだ初めての司馬ものなのだが、これはまたの機会に)と『合本・義経』に手がのびてしまった。あと『街道をゆく』の既読本を読みなおしたり。
一年程前に吉川英治の『新・平家物語』を読んだのだが(その時の感想はコチラ→http://d.hatena.ne.jp/hanjukudoctor/20141221)司馬の義経伝ということになる。
いわゆる世間一般の「判官びいき」という言葉に挑戦するかのように「戦争は抜群にうまいけど、ちょっと幼児性が高くて、政治的文脈を全く理解できない、ちょっとヘンなやつ」という、かなり斬新なキャラクター造形でした。でも、確かにこういう性格であれば、平家物語(いわゆる現代語訳を読んでも、ものすごくいきいきとその人物造形がなされていると思う)のエピソードがすんなり理解できるわけだ。
で、そう考えると、義経の末路は、悲劇的ではあるが、まあはっきりいっちゃって自業自得だと思う。
もし「歴女」とかがいる現在に司馬がこの本書いてたら、義経ファンに刺されたりするんじゃないの?と思うくらい、身も蓋もない書き方だけどね。
『逆説の日本史』とかで書かれている義経の政治オンチの話も、司馬遼太郎が全部書いてることで、ただの通俗小説でここまで資料を元に人物のプロファイリングをする司馬ってやっぱりすごいよなあと思った。
* * *
あと、後白河法皇の人物造形が、かなり出色で。
いわゆる後世語られる「義経都落ち」については、後白河目線で「そういえばあのクラスメート、最近学校に来なくなったけど、どうなったの?え?自殺したんだ。ふーん」くらいのタッチでさらりとばっさりカットで実にクール。
後白河法皇、上司には絶対したくない(けどまあまあお見かけする)タイプ。
―牛車を、牛車を。
と、法皇は連呼しつつ走った。目的は市中に車を出して義経の落ちゆく姿をみたいがためであり、その理由はまず好奇心からであった。法皇は平家の宗盛らが捕らえられてきたときも、女房車に乗ってひそかに見物した。それとおなじ物見高さが、この日本におけるもっとも尊貴で、もっとも権謀ずきな、そして臣下の浮沈などは一場の影絵芝居ほどにしかおもっていないこの人物の心を、いまその目的にむかって掻きたてていた。
ちょっとここの文章、締め切りに追われてるのか、司馬にしてはやや乱れてますが、実にイヤーンな描写である。
司馬は、作中の人物に対する好悪をわりと隠さない。(多分いちばん嫌いなのは石田三成)義経に関しては、全否定ではないが、どっちかというと嫌い、後白河法皇はやや食傷気味ではあるが、やや嫌いだが、好きな部分もあり、と見た。