半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

辻仁成『ピアニシモ』

ピアニシモ (集英社文庫)

ピアニシモ (集英社文庫)

 ミポリンの旦那、辻仁成、(親愛を込めて、辻やん)の処女作。
 古本屋で105円で購入。残念ですが辻やんには印税は支払われない。

 うーん。
 人生の中で特定の時期の人間には、激しく共感を呼び起こすかもしれないんですけれども、僕にはあんまり。読んだ時期もちょっと時期を外れていたし(僕もうおっさん)。それに、僕ねえ、こういう子供じゃなかったからなあ。
 文体としては、80年代に多かった(今でもか?)改行の多いやつ。のっけから、

ざらついた空気が、

から書き出しだもん。これはブブーですよ。スタイリッシュな文体?いや、ところどころひどく通俗的なフレーズが目につく。Kusakabeさんに、「ざらついた空気ってなんですか」と聞きかえされちゃうと思う。

 だけど、いわゆる青春文学って、そういうもんだろうなあというのも真実で、ひどく格好良くて格好悪いのが青春の本質だと思うし、たとえば石原慎太郎の『太陽の季節』はこの作品を圧倒的に凌駕しているかというと、そうともいえない。