半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『食糧人類』1〜7

オススメ度 60点
上手に風呂敷畳んだな!度 80点

食糧人類-Starving Anonymous-(7) (ヤンマガKCスペシャル)

食糧人類-Starving Anonymous-(7) (ヤンマガKCスペシャル)

エロ・グロなどもてんこ盛りのディストピア漫画、『食糧人類』も、遂に完結。
これも、なんか漫画アプリとかで「刺激強いトレイラー」として紹介されているのにひっかかった気がする。


バイトとして雇われ、とある施設に来た二人の少年。
そこで二人がみたものは……

みたいなやつ。
GANTZマトリックススターシップ・トゥルーパーズを足して5くらいで割った作品。

ちょっと作品のプロッティングに無理があるし、登場人物の特異性が目立ちすぎて、どうなん?どうなん?と思いながら読みすすめてきたが、
7巻では、大団円を迎える。
主人公は狐につままれたような面持ちで日常に帰っていき、決してわかりやすいハッピーエンドではなかった。
が、割とストンと腑に落ちるものではあった。


さらば青春の光』のツッコミの人みたいな口調で、
「えー?…
 突然?
 ここで?
 プリオン出てきたよ!」みたいには思った。
言いたいことは少しあるけど、これ以上はネタバレになるから、あんまり言えないけど!

ま、終わりよければすべてよし。

そう言えば、1巻・2巻のあたりではエロが結構どぎつかったけれども後半なくなったな。
途中明らかに陵辱監禁輪姦もの、みたいな部分あったけど、不適切だったんだろうね。

『DESIGN the Future〜デザイン思考の先をゆくもの』

オススメ度 50点
ちょっとつるっとしすぎている度 80点

デザイン思考の先を行くもの

デザイン思考の先を行くもの

ちょっと前に『漫画でわかるデザイン思考のすすめ』みたいなやつを読んで、デザイン思考をもう少し体系的に学んでみたくなった。
ので、タイトルにデザインとついているこれを買ってみた。

電通のコピーライターとして活躍してきた一方、ハーバード大学デザイン大学院にて都市デザイン学修士を修めた建築家でもあるという異色の経歴を持つ著者の視点から、 日本人が抱えてきた“デザイン"という言葉への誤解を紐解くとともに、デザイン思考の先を行く新たな手法の秘訣を紹介します。


ええと、デザイナーらしく、かどうかはわからないが、スペースの多い本でした。
わかりやすいとは思う。

スクリプト、見立ての力
・デザインは意匠ではなく問題解決
・形態は機能に従う、形態はビジョンに従う
ブレインストーミングは大事だが、結局は個人作業を行うことにはなる。
・見立てる力、ロールプレイング。因数分解

バックミンスター・フラー
The best way to predict the future is to design it
「未来を予測する最良の方法は、自分自身でデザインしてしまうことである」
は、確かにスッキリ男前な考えではありますな。

やっぱりティム・ブラウンの「デザイン思考が世界を変える」を読まないといかんか。

この本に関しては、ふわりと真髄が書かれているが、これくらいのほのめかしで、さっと頭に入り、明日からの自分の思考様式がアップデートされるほど僕は頭が柔軟ではないのかなあ、と限界を感じた。
もうちょっと体系的に書かれた複数の本を読まないと頭に入ってこないみたいだ。
(傷つくなぁ……)
今の自分のニーズにはなかった、と思うことにしよう。

『やらない理由』カレー沢薫

オススメ度 60点
やっつけ仕事度 70点

やらない理由

やらない理由

OLをしながら、既婚女子でありながら、腐女子でもある。
廃人でもありながら、毒舌文筆家、おまけに漫画家でもあるという、割ととらえどころのない人。

(以前の日記)
halfboileddoc.hatenablog.com

んで、この本。

お金はほしいが、働くのは嫌、相手の本心は知りたいが、嫌いと言われるのは嫌、セックスはしたいが、自分から積極的に誘うのは嫌…
対立する二項をお題にしながら、ダラダラと書き連ねられたコラムだ。

企画立案の編集者任せの本と、口さがなくいってしまおう。
やっつけ仕事なのだ。
しかしながら、腰が入っておらず手打ちであるにもかかわらず、結構おもしろい本に仕上がってはいる。
カレー沢女史の地力を感じる。

全く優しくないが、いざとなったら、人の首を躊躇なくへし折れるという男は、確かにいざという時頼りになるかもしれないが、いざが来なければ、ただゴリラと同じ檻にいるだけだし、そのいざが自分にやってくる可能性の方が高い。日本が『北斗の拳』のような世界観なら、そういう頼りがいも必要かもしれないが。一応法治国家でモヒカンジープが走ってない今現在においては、優しすぎるだけの男とでも十分生きていけるのではないか。
(優しい男は好きだが、優しすぎるのは嫌)より

なんか睡眠時間が足りない時に読んだら、ふーんと納得してしまいそうだ。
そんな感じの本だ。

さよなら、ハイスクール

オススメ度 60点
ちょっと強引な筋立てですが読後感のさわやかさ度 90点

さよなら、ハイスクール (1)

さよなら、ハイスクール (1)

なんかこれは誰かが推薦していたんで読んでみた。
スクールカーストに関する漫画。ということで学園漫画。

スクールカースト下位に属する男が、スクールカーストを壊そうとして、一番人気の女子に告白するが、あっさりOKをもらって面食らう。
その女の子は退屈な学園生活の予定調和を壊すために、彼の思いつきを利用するのだった……みたいな話。

おもしろくもあったが、プロッティングにやや難があるなと思うところもあった。
ただ、スクールカーストを利用して教室の秩序を維持している先生の本音とか、そういうところはリアルな視点だったよな、と思う。
ヒロインにあまりそそられない(シズル感に欠ける)ので、そこはあまり感情移入しにくい。

最後、文化祭がクライマックス。
ちょっとデウス・エクス・マキナ感あるものの、ストーリーの終息という意味では、すっきりと終わって、爽やかな読後感で、それはよかった。

ただ、このまえ紹介した「17歳の塔」の方が、スクールカーストの陰惨な面については、いろいろ丁寧に書かれているようにはみえ、リアリティがあった。
halfboileddoc.hatenablog.com

ブラック企業

オススメ度 70点
労働契約などの参考になる度 80点

ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪 (文春新書)

ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪 (文春新書)

Kindle 日替わりセールだったかもしれない。
筆者は在学中に若者の労働相談を受け付けるNPO法人POSSE」を立ち上げ、労働相談にかかわってきた人。
2000-2010くらいまでの労働環境の変化を概観する本。

1990年代後半からリーマンショックくらいまでは、どちらかというと、就職氷河期からの雇用難で、新卒者が就職できず大量に非正規雇用に流れた。
正規雇用者と正社員の生涯賃金は格段に違うことが露わになり「フリーターになるとこんなに悲惨だ」と脅迫的に教育され、正社員になることが成功の第一歩とされた。
ちなみに僕は昭和49年生なので、この就職氷河期世代。
ただ、リーマンショック以降、労働相談の質が変わってきたらしい。
ブラック企業」問題の被害の対象は主に正社員。

正規雇用を忌避し、正社員になろうとする新卒者の心理を逆手にとって、正社員として入ってきた新卒社員を酷使することで人件費圧縮を狙う。
すべての新卒者が質のよい社員になるわけではないので、新人の時点で「選別」する。
選別に漏れた新人は、圧迫や心理的脅迫で、退職に仕向けていく。
絶対的な権力構造、パワハラ、セクハラ…さまざまな違法行為。
努力しても何しても罵られ、絶え間なく否定され、人格破壊を行って退職に追い込む。
これがブラック企業の基本戦略の一つだったりする。
確かに「使えるやつ」を効率よく採用するにはこれが、その時点での最適解だったのかもしれない。

本としては勉強にもなるお話ではあった。
が、ただ、今は「ブラック企業」問題をうけて「働き方改革」などの言葉で象徴されるように、揺り戻しがきている。
また、リーマンショックの頃、超買い手市場であった労働市場は、現在は、労働人口の減少をうけて、今は売り手市場だ。
なので、雇用者に厳しい企業は、労働者に相手にされなくなりつつある。

なので、ある種「ブラック企業」は淘汰されつつあるし、セクハラ・パワハラに社会の視線が厳しくなったのもここ数年のトレンドだろうと思う。
ブラック企業の手口、例えば、みなし労働時間制や、最低賃金に残業を含めた条件を提示する、最終月の給料を支払わない(手渡しにする)ことで、メンタルを病んで会社に来れない人へのコスト削減だったり、も、現在は容易には行えない。

少しずつ世の中は進んでいると思う。

働き方改革法案」が来年度から施行されるが、その法案の基本理念は、中小企業の経営者にとってはまだ「腹落ち」できていない部分が大きい。
いや、大多数の被雇用者にとってもそうだ。だって「同一労働同一賃金」って、本質的には年功序列を否定するものだから。
法案の制定の背景には、世界での労働契約・雇用契約の流れと、今までの日本の労働問題を理解する必要があるが、
この本は、近年の日本の労働問題が概括されていると思う。

モテ2題。『モテる読書術』『モテすぎて中毒になる男女の心理学』

『モテる読書術』長倉顕太

頭が良くなり、結果も出る!  モテる読書術

頭が良くなり、結果も出る! モテる読書術

うん、こういうわかりやすいイキっている本はいいね。
スカッと読める。
あんまり本読めない人に、「本読むといいことあるぜ?!」というのを、言葉少なく、スペース多く言葉をつむいでいる。

「人生って楽しいものに決まってる」に、自分だけがうまくいっていない。だから、成功法則の本に食指が向くわけだよね。でもこの前提って大間違いだと思うんだ。

世界には頭良い・顔良い・家柄良いって連中がごろごろいる。
凡人の僕らが太刀打ちできるわけないじゃん。
なのでクソ努力して一流の二流を目指しましょうよ、というコンセプト。
以下、備忘録。

  • 答えは一つではない。選んだあとが問題
  • 知らないと、知らないことすら気づかない
  • 凡人は意志が弱い
  • 本を読むから、「本を読む人」になるのではなくて、「本を読む人」になるから本を読むようになる。
  • この世は情報が先で現実が後
  • 世の中の「なんでも褒める」みたいな風潮は自己承認欲求が強いひとを作るだけ
  • 検索してもいい。周辺情報を調査しよう。メモをとる。あらすじを知ってから読んでもいい
  • ブックスマートから脱しよう(読書術の本なのに!)
  • ワーディング(言葉の選び方)は大事
  • 自分は他者との関係性の集合体。すべては他力
  • 知識レベルが同等な人が引き寄せられる。「親しい友人5人の平均年収があなたの年収になる」。読書量と年収は比例する
  • 人脈に必要なのは「リスク」「ギブ」「情報発信」の3つ(詳しくは本を読んでください)
  • 時間がないとき、お金がないときにしか本当のチャンスは来ない
  • 抽象度を上げた思考が人生にはとても役立つ

いいじゃん。
でも「モテ」って書いてあるけど、現実に男女の機微とかそういうの一切書かれておらず、観念上のモテ。
「ギター弾けるようになるとモテるぜ!」レベルの空手形ではありました。

「モテる読書術」って言っているけど、これは「モテない人」が手に取るだろうな、というためにこういうタイトルになっているようだ。
そして、読書術っていうけど、話としてはもうちょっと広い、人生指南みたいなことが書かれている。
いいこと書いてある。これを実践したら、モテるというよりは、同性にも異性にも一目置かれる人間になれると思う。
モテてる、どころの話ではない。
羊頭狗肉の逆だ。
ハムカツだと思って買ったら、衣の中にシャトーブリアン入ってたくらいの感じだ。

『モテすぎて中毒になる男女の心理学』神岡真司

モテすぎて中毒になる 男女の心理学

モテすぎて中毒になる 男女の心理学

モテすぎて!
中毒に!
んなわけあらへんがな。

こっちの本は看板に偽りなし。
男女の人間関係の心理についての本。
男性社会は競争原理だが、女性社会では共感原理。
それを敷衍して、いろいろなシチュエーションにおける行動の違いみたいなのが書かれている。
けっこう多岐に渡るので、読後感は逆に希薄かも。
こちらの本も、モテるというよりは、異性の喜怒哀楽に対して、穏便に対処できる、とかそういう感じだ。
(ま、それもモテの一助かもしれないけど)

* * *

ちなみに白状すると、僕はこういう「モテ」という言葉に弱い。
はっきりいうと、モテたい。
44歳既婚男性なのに。


どれくらいモテたいかというと、「白雪姫」あるじゃないですか。
ディズニーの。
白雪姫、美しいあまり、周りに動物とか集まってきたり、歩いたら草花までひらひらひら…となびいたりする。
youtu.be

あれくらいモテたい。森羅万象にモテたい。

というと嫁に「馬鹿じゃないの?」と言われる。

あと、ほんまにモテてた女子からは「有象無象にモテたら大変なんですよ?」
とも言われた。
そうかもしれない。
が、一度くらい言ってみたいもんだ。

壇蜜日記 1〜3

壇蜜日記 (文春文庫)

壇蜜日記 (文春文庫)

壇蜜日記2 (文春文庫)

壇蜜日記2 (文春文庫)

壇蜜日記いいですよーというのは、もう東京に行ってしまったミステリアスな女性、壇蜜と同じ「しずか」さんから教えてもらった。
そう言えば、葬祭関連の仕事に携わっていたりという経歴さえも、微妙にシンクロする。
どうか熱帯魚だけは飼わないでいてほしい。と思う*1

壇蜜、文章めっちゃうまいのである。例えばこんな感じ。

くしゃみの真似事をお願いされ挑んでみたが、皆の想像していた可愛げのあるあざといとも言えるようなものとは大幅に違うものが出た。本格的すぎたのだ。これまでに大変可愛いくしゃみを出す女性を数人見かけたが、どの女性ともさほど仲良くはなれなかったことを思い出す。くしゃみの可愛さに加え、少しずつゆっくり食べる……思わせぶりな迷い口調……お金持ちで容姿がいい……そんな方々にはどうも好かれない若人時代だった。こちらが近づいても相手にされなかったのだ。今思えば、私もその子達が嫌で妬ましかった。

4−5行でまとめられた日記だけれども、視点、書く内容など、無駄がなく非常にうまいな、と思う。
シニカルで厭世的でありながら、かといって取り付く島がないわけでもない。
聡明な方だな、と思う。黒い枕草子、とでもいう感じ、か。

文章のうまさでつるつると読み進むものでもなく、芸能人ならではの生活をみせてくれるわけではない。
芸能人でありながら醒めてる視点が癖になるのかもしれない。
女子の社会の中で、はみ出し者感、というのもある。
そういう日記だよな。

そういう意味ではちひろさん、にも似ていますね。
そういえば、熱帯魚のモチーフはこっちにもバックフローしているな。
https://halfboileddoc.hatenablog.com/entry/2019/02/19/070000

*1:まあ、熱帯魚は高いし、世話大変だし、ないか