半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『観光立国の正体』

スイスの観光のあり方をロールモデルとして紹介。
スイスは、イギリスが「大英帝国」が経済発展し、イギリスの貴族階級の間で「登山」が流行った時代に、インバウンドに成功した。
スイスの人たちは、自分たちの「価値観」を守ることにとても自覚的。
それは、当時世界で最も進んだ知性と感性、教養を持つ富裕層と接する中で、サービスの提供側もその質を高めることができた。
「目先の利益」よりも都市生活者であるお客様にどうやったら喜んでもらえるかを真剣に考えたから。

スイス=観光だけではなく、自国の産業構造を高収益体質に作りかえてきた。
目先の利益よりもCLTV(顧客生涯価値)を得る努力

本書のストーリーラインは、このスイスのありようをロールモデルとする一方、日本の現状がそうはなっていないことを問題とする。

日本の観光地は、経営感覚がない。
「食うに困っていない人」が多い
一見のお客さまを効率よく回すことを考え、満足度やリピーターを獲得する努力を怠った。
「リピーターあってこそのサービス業」というビジネスの常識すら共有されていない。
観光だけでまちおこしはできない。そこに暮らす人の豊かなライフスタイルが前提。
グローバルに見れば、観光は世界のGDPの1割。まだ伸びる余地はある。
同業他社による足のひっぱりあい。
「地域内でお金をまわす」という意識の欠如
「時間のかかる消費行動」が大事。
富裕層を取りっぱぐれている。

私もそうだが、田舎、地方都市で暮らす人にとっては、自らの地域の「町おこし」「地域振興」がその地方都市の命運をわける。
その意味では、地域の観光政策、地域振興策は他人事ではないのであるが、しかし、旧態依然とした二流の官僚機構がこれに立ち向かえるか、となると難しい。
しかし、こういう新書でコンパクトに問題点を列挙していると、現状の問題点を共有できる。
実際、地方の観光課は、かつてとは違い、割とレスポンスがよくなり、以前とは変わっている。
問題の共有と、問題解決がコモディティ化されているためだと思う。
(地方公務員は、どちらかというと秀才の集まりなので、こういうわかりやすいフレームワークがあると動きやすいのは事実)
 ただすべての自治体が、このレシピにそってやっても、多分、うまくいくところは3割くらいだと思う。