半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『働くことの人類学』

民俗学、比較人類学の話ではあるのだが、今の正調は文明とは少し違う伝統社会における、「仕事」に関する考え方を紹介している。
これが、めっぽう面白い。

我々日本人の仕事に対する考え方、生きがい、とかねばならない思考というのと違って、世界各地の文化では、仕事に関するアプローチが本当にいろいろだ。

パプアニューギニアの貝殻の貨幣システムの謎(とんでもない経路で長距離を流通している)=冠婚葬祭のお金とリアルマネーはまたちょっと違ったりする話。公と私の価値基準の違い(日本との違い)。
一つのことをずっとやっていると尊敬されないブッシュマンの世界。網野史観の「百姓」の話にも通じるかもしれない。
ダサネッチ(エチオピア遊牧民
中国でビジネスをするタンザニア商人(チョンキンマンション、ギグエコノミー)
ラオスで暮らしていたノーボーダーの人たち「モン」定型的な仕事が苦手で、ズッキーニや松茸栽培に強みあり。

我々の常識では、ありえないような考え方であったり、生活習慣だったりする民族だったりもするのだけれども、
これが、この2000年以降の技術革新の中で、ライフスタイルの変革を迫られる時に、案外今の世情であれば、こういう考え方の方が
生き方が楽なのではないか?と思わされる、気付かされることが多くて。

それが、今比較人類学や文化論が、再び注目されている理由なのかもしれない。そういう限定された民族の限定されたコンセプトに「デジタル」という接頭語をつけたら、なんか、非定型的な行動をしているイノベイターの行動を綺麗に説明できる。
陳腐な例だと「ノマド」→「デジタルノマド」という言葉がまずそうだよね。

そういう意味では、IT化によって、世界は流動化している中で、遊牧民や、農耕定住民の古典的な概念を上書きするのに、こういうユニークな類型が再発見されているのだろうと思う。

そういう意味で、この本はビジネスマンや、民俗学じゃない働いている人が読んだら、多分いろいろ思うところがあると思う。
いわゆるテキスト化されていないので、再読やハイライト指定ができないのが唯一の欠点。

「その日ぐらしの人類学」は読んだけど感想書いてないので再読してみよう。