半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『プロセスエコノミー あなたの物語が価値になる』

SNS時代の売り方、プロセスエコノミーについての教科書的な本。とでもいうべきか。
だいぶ読了するまでに時間がかかった。

人もモノも埋もれる時代の、新しい稼ぎ方。プロセス自体を売る「プロセスエコノミー」
モノそのものはコピーできるが、プロセスはコピーできないから。
「Community Takes All」(アンドリーセン・ホロウィッツ)

自分がやりたいことをやって、作りたいものを作って生きていくために、プロセスエコノミーは強力な武器になります。

プロセスエコノミーの逆はアウトプットエコノミー。
アウトプットエコノミーが一定の規模まで到達したことで、もう差別化するポイントがプロセスにしかない、となった。
「役に立つ」ことより「意味がある」ことのほうが価値がある。

プロセスエコノミーの利点

  1. アウトプットを出す前からお金が入る可能性
  2. 寂しさの解消
  3. 長期的なファンを増やせるかも

グローバル・ハイクオリティ(アウトプットエコノミーの極北)か、ローカル・ロークオリティか。
モノも潤沢に溢れ、何でも安く変えるようになった時代、
Demonetized(非収益化)とDematerialized(非物質化)がキーワード
(ただし、これは宇露戦争や昨今の物価高で、時計の針が巻き戻った感じはある)

Story of Self、Story of Us

Effectuation:
・Bird in hand 自分の手のうちにある楽しいことを始めよう
・Affordable Loss 許容範囲の中で失敗を設計しよう
・Patchwork Quilt 単体では使い物にならない布の端切れを縫い合わせ、重ねに重ねて一枚の大きな作品が生まれます
・Lemonade 失敗の中に実は成功がある
・Pilot in-the-plane 中心人物がパイロットとして操縦桿を握り続けている

クリエイターを応援する、セカンドクリエイター
アウトサイド・イン(結果から戦略を逆算する)してかインサイド・アウト(自分の内面から沸き起こる衝動を起点とする)

という、アメリカとかのマーケティング理論を効果的に紹介していて、プロセスエコノミーという新しい潮流に向かう人間にとって、
よいチュートリアルになっていると思う。

アジテーションとしてもよくできている本だが、読み進めてゆくときちんと「プロセスエコノミーの弊害」も記載されているわけで、それは割と誠実。
・プロセスで稼げるとスタート地点を見失いないがち(手段と目的のとりちがえ)
・調整のレバーを間違えてはいけない(詐欺と紙一重
・大切なのは他人ではなく自分のものさし(ギャラリーにおもねるな)
・フィルター・バブル(自分のみている風景が世界のすべて)に要注意。自分を客観視すること。
SNSに踊らされる。プロセス自体に自分の人生が操られる
・観客を主体にするな
・「現実を視よ」(無茶をしているように見える人たちは実はリスクコントロールがとてもうまい)
・Will / Can / Mustの順番を間違えないこと

2020年代に、新しいことをしたい個人にとって、やはり読んでおくべき本なんだとは思う。
よくも悪くも時代性なんだろうな。

ただ、こういうマーケティングが前提となっている金・モノ余りの時代は、コロナとウクライナ戦争、その後の世界エネルギー争奪戦で、すこし風向きが変わっているようにも思われる。
これからの未来は2010年代の好景気に夢想したような、豊かでバラ色なものではなさそうで、「現実」の酷薄さに足元をすくわれる可能性もあるのかもしれない。