半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

アツいクリエイター漫画『これ描いて死ね』『映像研には手を出すな!』

なんかWebで紹介されていたので読んでみた。マンガ大賞受賞だそうな。
小笠原諸島の離島に暮らす女子高生。
密かに追いかけていた打ち切りした漫画家は、実は自分の担任の先生だった…
マン研を作り、漫画を描こうと燃える。

や、ちょっと偶然が過ぎるんじゃないかと思うけども、燃えるー。アツい。
青春だわと思った。

こちらはこちらでアニメ化もされ、かなり有名になったが、アニメを作りたい女子高生が映像研を立ち上げる話。

どちらも、クリエイターの苦しみ、葛藤、実生活との相剋などがイタいほど描かれる。
マチュアならではの、学業と趣味とのバランスの対比、夢を下りた人生の先輩からの励まし、

熱量が高く元気がでる。

ツンデレの担任の手島先生、クリエイターの「トガり」さえもくるみ込む、モブキャラに見えておそらく重要な役割を担う赤福
個人的には素晴らしいと思った。

* *


私もささやかながらクリエイティブな趣味をしているが、もはや社会の柱石となって久しい。
ので、彼女らの不安、未来への希望などはすでに過去のもの。
しかし、私などは、夢が金魚すくいの金魚だとしたら、自分の持っている「ホイ」を水につけることさえなかった人間。
水につけて金魚を追い求めて破れたのであればあきらめがつくのかもしれないが、
結局いまだに金魚すくいごっこをしている中年である。

しかし、このモラトリアムならではの「未熟さと熱量」ってやつも、
学生も終わりにさしかかり社会にでるあたりになってくると、大方は夢を追いかける道と堅実な社会人の道を天秤にかけて、
堅実な道をほとんどは選ぶわけである。

ジャズのプロミュージシャンにしても、音大のジャズ専攻はともかく、いわゆるジャズ研出身のプロミュージシャンは、一旦は就職するけど、
悩んだ挙句、専業ミュージシャンに転向する比率が高い。
夢あきらめきれず、のパターン。

まあしかし、このジャズ研三年生くらいから社会人五年目くらいのあたり、自分の技量と情熱を天秤にかけるあたりが、
一番シビレる時代ではないかと思う。

初心の情熱をずっと持ち続けられるか。
技量は上がるけど、やはり普通は、ジャズで食ってこうという情熱は現実を見て、冷えてゆくものである。
同時に自分の技量は通用するのか。
飛び込み台から飛び込むべきなのか…いや、やっぱりやめた方がいいのか。

高校生というのはまだその岐路に立たされてはいない。
未熟なスキルはともかく情熱でゴリ押しできる時代。幸福な青春時代。僕にもあったような気はする。

好きなことで食ってゆく道は、オトナになって思うのだけれども、甘美なものだ。