半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『少年の改良』『夫婦茶碗』町田康

買って読んだのはだいぶまえだけど、読み直してみた。

少年の改良

遠縁にあたる17歳の少年を相手に、「ロックとは何ぞや?」と「私」が煩悶する短編小説。

「私」は、突然、訪ねてきた女性の美貌に惹かれ、相談に乗ってしまう。美女は、もう20年以上会っていない従姉妹の子。17歳の息子「直征」が、ロックにかぶれ、学校をやめて、ロックで身を立てたいと主張しはじめた、思いとどまるよう説得して欲しいというのだ。

会ってみると、「直征」は母親似の美少年。髪を金色に染めていても、利発そうだ。自身も若い頃、ロックに凝り、ロッカーの知り合いが多く、ステージに立った経験さえある「私」は、「直征」にロックの厳しさを教え、ロックを諦めさせようと気合を入れてみたものの、反応は芳しくない。「私」はライブハウスや貸しスタジオでにぎわう「ロックの町」へ、30年ぶりに「直征」を連れて出かけてゆく……。

夫婦茶碗はまた、別の話。

初めて町田康を読んだのは『くっすん大黒』だった。
どれも、町田康の自己を投影したような主人公がでてくるわけであるが、その「わけのわからない怠惰で低層のやばい男」にいろんなシチュエーションをひっかぶせて、それに対して主人公がどう反応するのか(やはり常識人と違って、変に逃げたり、変に逃げなかったりして、さらに面白い状況に投げ込まれる)。「人間の屑」はその技法で極限まで推し進めたような作品で、くっすん大黒の発展編とでもいえるものだろうか。

 町田康のこういう破天荒文学には、ひどく惹かれるけど、町田康の小説の主人公みたいな男が実際にいたとして、そういう人が、そういう小説に惹かれるんだろうか。惹かれないんだろうな。ないものねだりなんだろうなあ。