オススメ度 80点
このフォントは発明度 100点
以前から言っているが、私は「世界のおわり」が大好きだ。*1
これは村上春樹の『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』ではなくて、普遍的な人類滅亡後とか、衰退期の世界の話。
SFの小説でも漫画でもこの題材に妙に惹かれてしまう。
これは僕が冷戦期のアトミックエイジ、世界終末核戦争の恐怖を背に少年時代を過ごしたからかもしれない。
つい最近は「銀河の死なない子供達へ」がよかったな。
halfboileddoc.hatenablog.com
ロボ・サピエンス前史は、AIやロボットに産業の主体が移りつつある近未来の世界を描く。
そしてロボットの視点で、人類の滅亡からその次の時代への変遷をえがく。
絵柄は、シンプルな描線のペン画で、陰影もつけない白黒である。
そのためレリーフ画というか、なんというか、宗教絵画のような荘厳ささえある。*2
ロボットには死はない。
死というものがないけれども、無刺激な状態で数万年を過ごすというのはどういう気持ちなんだろうな、とも思う。
人間は死は怖いけれど、無為や退屈も怖い。
だからこういう話は、無為や退屈が死よりも上回るのかという哲学的な問いを僕らに突きつけているのだと思う。
ただ、ロボットが数万年を無為に過ごすのは、我々が思うほどは苦痛じゃないんじゃないか、とも思う。
回路に入力がなければそのままでスリープしておけばいいのだから。
誰にも会わずに数万年過ごすというのは大変つらいだろうな、というのは人間側の感性であってロボットではない。
我々の勝手な推測にすぎない。
不死なものの感覚は、多分我々とは違うのだろう。
ロボット=人間の差異を際立たせる話は、色々ある。挙げればキリがないけれど。
『ロボ・サピエンス前史』は、ある種の宗教的静謐さを持った作品として記憶に残った。同じものをダイナミックに描写することもできただろうが、スタティックな描写が、クールだ。*3
人格を持ったロボット、不死のペーソスを描いたのは、もちろん『火の鳥』をはじめとする手塚治虫にもたくさんあるけれど私はこの二つが好き。
- 作者:Boichi
- 発売日: 2008/10/23
- メディア: コミック
アフターアポカリプスものは、沢山ありすぎてちょっと紹介しきれない。まあ言うたら北斗の拳とかだってそうだし。
*1:ちなみにSekai no owariは全く興味がありませんすみません。
*2:そして独特な間隙の少ないフォントで文字が埋め込まれており、よく読めば色々わかりやすいようにはなっている。この字体は真似したくなるね