半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『印象派で「近代」を読む 光のモネから、ゴッホの闇へ』

近代絵画の話は、人間がいかに対象物を見ているのか、という根源的な問題の相克であったりするので、好きだ。
「神は細部に宿る」というが、視覚と現実の乖離を、二次元で表現することの問題は、哲学的な難問。
であるのに、アウトプットとしての成果物としての絵画は、わかりやすい。
いわゆるクラフトマンの技術論でそれが目に見える形で解決されるという、哲学的な深遠さと、成果物の明瞭さが面白いよね。

なんか、ジャズにおけるコード理論と、実際の成果物の音源との問題に似ているような気がする。

この本は、そういう七面倒臭い絵画論みたいな話じゃなくて、近代と印象派の風景素描、のような感じ。
当時のフランスの社会の世相と、そこで勃興し生まれた印象派の足取りを、わかりやすく活写したような本。

アトリエから、自然にでてゆくようになり、光の表現が多彩になったこと。
フランスの絵画界の変遷、社会における絵画の位置づけの変化。
ナポレオン三世と、セーヌ県知事オスマン男爵による都市計画によるパリの変貌
ブルジョワ階級、デュミ・モンディーヌ(半社交界人)女性の存在、黒い服の流行、バレエなどの当時の世俗の風習

印象派の時代は、なぜか日本人大好きなのであるが、これは、Rising Sun日本が、明治維新から列強になっていく日本の輝かしい時代であったから、なんだろうな。浮世絵などの日本文化に影響をうけているという親近感もあるだろうし。