半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『女系図でみる驚きの日本史』

ちょっと前から橋本治の『双調平家物語』を読んでいる。
文庫でもKindleでもいいのかもしれないが、単行本の装丁があまりにも美しかった記憶があるので、古本で単行本を買っている。
ただ、今5巻まで怒涛の勢いで読んだのだが、「保元・平治の乱」になる前に、力尽きてしまった。
なにしろ、『双調平家物語』は異常。平家物語いうてるのに、一巻は古代中国の則天武后の話で、2巻以降は蘇我入鹿から始まって平安時代まで古代日本の権力構造の成立までのプロセスが延々と語られる。平家物語いうてるのに、平家までなかなか辿り着かない。

「うなぎ懐石」セットを注文して、最後の「鰻重」が出てくる前にお腹いっぱいになってしまったような感じである。

そんな橋本治が、『双調平家物語』書いた際に調べたことをちょろっとまとめて書いたのが、
halfboileddoc.hatenablog.com

今回の本は、それとは関係ないけど、バックグラウンドはこのあたり。
著者は早稲田文学部を出た人。女系の系図を作るのが趣味という、まあはっきりいってしまうと、ある種の変態。というと語弊があるが、婚姻によって形成されていた日本の歴史にもうちょっと自覚的になれよ、という話。

  • 系図を描いてみると、蘇我氏も平家も滅びてなどいずに、しっかり政権の中枢におさまって繁栄している。
  • 子供は(もちろん父親の家柄は必要条件ではあるが)「母の家柄」によって厳然と区別・差別される(「外腹」「劣り腹」なんていう言葉もあった)

男は妻がらなり(男は妻の家柄しだいだ)。いとやむごとなきあたり(非常に高貴な家)に婿として参るのが良いようだ

  • 紫式部は『尊卑分脈』に「御堂関白道長妾」と記されているのは有名な話
  • 院政時代に「男色系図」 院政時期に男色が盛んになった(天皇の母方が力を持つ外戚政治から、天皇の父(院)が力を持つ院政にスライドしても、性の力で政治を操る発想が生きていたからではないか
  • 貴族は近親姦だらけ
  • 江戸時代では外戚ができないような仕組みづくりになっていた

など、日本史の研究者的には当たり前なのかもしれないけれど、一般にはあまり知られないことを、切り取って描くのは、とても面白い。