半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『生きる哲学としてのセックス』

オススメ度 70点
へえー 度 70点

生きる哲学としてのセックス (幻冬舎新書)

生きる哲学としてのセックス (幻冬舎新書)


ヨヨチューこと代々木忠の本。この方も一時代をなしたピンク映画の監督である。
70年代にピンク映画の監督としてデビュー。80年代初頭にAV監督となる。

まさか『全裸監督』がここまでヒットして往年の名台詞「お待たせいたしました、お待たせしすぎたかもしれません」が復活するとは思わなかったが、村西とおる氏より年齢は10歳上。AVのキャリアはヨヨチューの方が5年ほど早い。

私はAVはそんなに詳しい方ではないが、ヨヨチューの名前くらいはしっている。
こういうアンダーグラウンドの人が、サブカルチャーを経て、新書で固めの著書を出すのも、平成・令和のおかしみだうか。

70年代から90年代は時代の変節点でもあり、この時代に性規範や身体感覚は紛れもなく変化した。
多分80年代初頭では、堅気の女性は結婚するまで処女でいるべきという規範意識はまだあった。90年代の終わりには、そういう考え方は「むしろ気持ち悪い」くらいな感覚になった。
その時代の波を肌で感じていたはずの代々木氏の言葉には、含蓄がある。

・不倫を断罪することがいいかどうかはわからない。セックスはそもそも社会性に属するものではないからだ。
・ハシゴに登る時には、下の段を捨てなければ上に登ることはできない。知識とはそれほどのものです。(身につけた知識を手放した状態でセックスに向き合え)
・たいていのオスはメスより優位に立たなければ欲情できないので、強いメスの前で、オスはオスがだせない。
・思考でするセックス。相手の体を使ったオナニーのようなセックスではなく、互いの全てを明け渡すと混ざり合い、一つに溶け合うことができる。
・ゲオルギイ・グルジェフの理論「本能・感情・思考オクターブ」=性愛を理解するのに有用ではないか。

代々木忠の結論が、理趣経立川流の教義とかなり重なったところまで導かれているのは非常に興味ぶかいとは思った。
ただ、このあたり、実務経験(臨床経験)の乏しい僕には今ひとつよくわからない。
そんな、解脱するようなセックス、どれくらいの人が味わえるんだろうか。