オススメ度 80点
読後感のスッキリ度 100点
- 作者: 伊勢ともか
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2014/08/18
- メディア: Kindle版
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これ、読んだのは随分前*1だけど、奇妙な読後感があったので改めて。
転生が信じられている世界で、大罪人の生まれ変わりとして、生まれてからずっと刑務所ですごす少年ハロー。前世の記憶もなく、罪の意識もなく、ただひたすら罪を償う2代目ハローの日々とは!? かつて見たことのない世界観を若き鬼才が描く!
転生が信じられている世界というのは、現在の世界でも非常に限られてはいるが、未だにある。
例えばチベット仏教。ダライ・ラマは永遠に輪廻転生を繰り返し、死ぬと国中を探して新たなダライ・ラマを奉戴するやり方は、一般によく知られている。
『ゲド戦記』の2巻でも墓所の巫女は生まれ変わりだとされた。
近代は能力主義・平等主義が所与のものとされるが、昔はこうした身分制度が世襲によって固定されたような社会がほとんどだった。インドのカースト制度などもそうだ。
ただ、この本の社会は、一見、公平で平等な社会であるかのようにみえて、「前世」という検証不能な前提によって見えない階級社会を作っている、というところが、やや因習的な社会制度と異なっている。
でも、今生きている我々の世界、メリトクラシー(能力主義)の社会そのものが、表向きは公平な競争のもとに階級化が行われているように見えて、その実、目に見えない様々な力により、階層流動性は小さくなり格差が開きつつある。(例えば、東大生の親が高所得であるとか)
この作品は、こうした現状に対する批評性を有しているのかもしれない、と一世代前の私には感じられた。
キャラクターのかき分けなどは今ひとつで、デッサン力なども含め画力がそれほど優れているとは思えないが、ストーリーテリング、コマ割りなど、漫画としての力は大変優れていると思う。
*1:2015年だった。多分書評サイトかなんかで読んだのかな。