半熟三昧(本とか音楽とか)

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"Roy's Hard Groove"およびRoy Hargroveの足跡について

おススメ度90点
スーツにスニーカーが超クール度 100点

ロイズ・ハード・グルーヴ~ベスト・オブ・ロイ・ハーグローヴ

ロイズ・ハード・グルーヴ~ベスト・オブ・ロイ・ハーグローヴ

「ロイハー」こと、昨年急逝したRoy Hargroveのベスト盤。
この前小林洋介というプロのトランペッターの方のグループレッスンをうけたのですが、その方のRoy Hargrove愛がひしひしと伝わってきて、なんだかとても嬉しい気持ちになったので、改めて足跡を確認するために購入してしまった。

Roy Hargroveは僕がジャズを始めた学生時代に、新世代のスターとしてさっそうと登場した人。
そしてこの前、なんと49歳の若さで死んでしまった。
どちらかというと、Milesとか、Clifford Brownとかではなく、圧倒的なかっこよさと派手さから「Lee Morganの再来か」みたいに言われたことを覚えている。早逝ぶりもLee Morganっぽいことになってしまった。

新主流派みたいなのが流行りつつある時代、ジャズのレジェンドたちがゆっくりと退場し、ジャズはウィントン・マルサリス史観とでもいうべき、「アメリカの黒人史に深く結びついた歴史的音楽」という閉じた環の中でのみ意味をもつように緩やかに時代が転回していくなか、ロイハーグローブは、自分の立ち位置を、ジャズの中で、HiphopやR&Bの中で模索して生きた。

Roy Hargroveの足跡は、ここ30年くらいのJazzからHiphopに至る音楽マーケットの伸長に重なる。
時代の寵児としてJazzの枠を超えて、Acid Jazz、Funk、Rare Grooveなどの様々なジャンルに挑戦した。

それは場合によっては場当たり的に見えるかもしれない。
なんとなく、フュージョン全盛の時のFreddie Hubbardの足跡を思わせるような感じもある。
が、音楽そのものの行方がわからない現状において、精一杯、選択肢を広げるための行動であったと思う。
先駆者がいない道を、Roy Hargroveが切り開いたのは確かだ。
ロールモデルのない新たなジャンルでの活動というのは、きっと色々苦労も不安もあっただろうと思う。

例えば、ウィントンマルサリス。この人は、キャリアの初期の段階では、先輩に次々声をかけられて若手ジャズマンとして開花する(その前はジュリアードとかでてクラシックバリバリだった)も、途中から、「アフロアメリカンのルーツミュージックとしてのジャズ」という大義名分を得てからは、ある種自分の帝国を築いてしまい、現代のジャズにアクセスする姿勢は完全に失って、しかもそれを全く悪いことであるとも思わない。イデオロギーや純血性を重んじる人だ。*1
対して、ロイは、そういう安寧なところにおさまらず、自分のサウンドを、新しいサウンドと共振させて、新しい音楽に身を委ね、しかし古い音楽を捨てたりディスったりすることもなかった。帝国を統治することには関心がなく、あくまで一人のプレイヤーとしての立ち居振る舞いを大切にした人だと思う。剣道場を背負い、経営をするのではなく、あくまで剣客としての一生を全うした人だ。

だからこそ圧倒的に軽やかで、かっこいい。
やっぱりRoy Hargroveかっこいいな。

参考:
youtu.be
今回の話に出てきた小林洋介氏。カルメラというバンドでの活動で知られています。
この動画は、ややプライベートっぽい、一人のフロントマンとしての映像。

youtu.be
カルメラはこういうバンド。
スカパラからスカという縛りをなくしたような感じ。かっこいい踊れる系のインスト音楽。
こういうジャンルって今意外に競合が多い。ジャズマン、もしくはFunk frontとしての単独の仕事というよりは露出も増えるんだと思います。どんな人たちがやっているんだろうと思いましたが、一個のジャズマンとしてきちんとアドリブできないと、こういう音楽をさらりとかっこよく演奏できない、ということはよくわかりました。
ちなみに動画をご覧になればわかるのですが、ホーンセクション、特に金管はダンスステップにおいて、上下に激しく動くと唇に衝撃が加わって、唇を痛めてしまうので、どうしても上下動をおさえ、すり足になってしまうよなーと思う。
これをかっこよく見せるにはどうしたらいいんだろう。


roy hargrove quintet - strasbourg saint denis
いろんなジャンルのはざまで、自分をつらぬいたRoy Hargrove、FunkとHiphopの間みたいな立ち位置で、佳曲目白押しですが、一般的にも一番知名度が高いのが、この St.Denis Strousbourg。

*1:その意味で言えば、個人的にはパット・メセニーの方が、ジャズ的姿勢だと思う。