オススメ度 80点
「ばみ」の強烈度 80点
- 作者: 河本ほむら,尚村透
- 出版社/メーカー: スクウェア・エニックス
- 発売日: 2019/03/22
- メディア: コミック
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岡田先輩がSNSで薦めていたので、まずは漫画から読んでみた。
映画も公開されるらしいですね。
まず設定が狂っている。
創立122年を迎える名門校、私立百華王学園は、上流階級・政財界の子女が数多く通う名門校。そこは、圧倒的なギャンブルの腕を持つという生徒会長・桃喰綺羅莉のもと、生徒同士のギャンブルによる階級制度によって支配されていた……
設定を聴いた瞬間、これは「漫画ゴラク」連載か?と思ってしまうが「漫画アクション」だったら、多分読んだ時の緊張感はこうはならないだろうと思う。もっと「静かなるドン」と「ミナミの帝王」を足した感じになるだろうな。
思ったよりも面白くて、一気に読んでしまった。
僕は麻雀も競馬もパチンコもそのたギャンブルも全然しないわけだけれども*1、ギャンブル論とか、ギャンブル漫画は結構好きだな。
ギャンブルの基本は確率と非対称情報戦。しかし、最後に残る伸るか反るかの部分。
主人公は、そういうギャンブルの本質をおさえ、一定のフィロフィーに沿って動く対戦相手を洞察し看破する。
その上で最後の最後、生か死か、わからない部分を飛び越えるところに、快感を見出しているという性格設定。
すぐれたギャンブラーの資質とはそういうものなのだろうなと納得させてくれる。
まあ、そういうの「銀と金」とか「アカギ」とか「カイジ」とかの福本漫画にはよくでてくる。
僕はギャンブルは一切しないけれど、それでも惹きつけられてしまうのは、ギャンブルに限らず、我々の人生そのものが、
「不確定な情報の中で、何かを選択する」
という行為の繰り返しであるから。
ギャンブルというのは、特殊な状況にみえて普遍的なのだ。
だからこそギャンブルを描いた作品は広い読者を惹きつけるのだろう。
ちょうど「アルジャーノンに花束を」が、ただのSF作品というだけでなくて、能力を徐々に失っていくという初老期以降の普遍的心情と悲哀を描いているという点で普遍的であるのと同じで。
- 作者: ダニエル・キイス,小尾芙佐
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2015/03/13
- メディア: 文庫
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漫画も進んでくると、「x喰」一族というのがでてきて、それらが主人公(主人公も蛇喰という、一族の一人なのだが)に立ちはだかる。強敵の出現はおもしろくはなるし、主人公の蛇喰夢子の強さについても一定の理由が示されるという点ではいいのだが、「x喰」でない登場人物やモブのクラスメートの意味合いが相対的に薄くなる。
結局は選ばれし貴種にしか能力は宿らないのかい、という置いてきぼり感はある。
この辺はきわめて微妙なトレードオフだなと思った。
ちなみに、漫画家と読者の関係も、情報の非対称性という意味では、胴元と賭け子の関係に似てはいる。
読者に対して情報を隠す点で有利な部分はあるが、「天才」を描くにおいて、書き手の知性以上の天才を書くことはなかなか難しい。でもその意味で「賭ケグルイ」は割と成功しているように思った。